TZは公道でもサーキットでも走りやすい
そしてようやく手に入れた念願のTZ1だが、元はといえばフェラーリをはじめとするF1チームで活躍したスイス人レーシングドライバーのクレイ・レガツォーニがファーストオーナーだった個体とのこと。SZを買った後に前オーナーと話がついたものの、コロナ禍もあって4年も待つことになったそうだ。
「ジュリアが新車だった時代の技術責任者だったオラッチオ・ザッタが直々にTZ1を手がけたといわれています。当時のアルファ ロメオは鋼管フレームを持っていなかったので、57kgしかないTZ1のチューブラーフレームはアンブロジーニという会社が造ったものです。ここはセスナやヘリコプター用のフレームを造っていたところで、クルマ用はTZ1のモノが初めてだったようです。後に高い評価を得て、F1のフレームを造るまでに成長しました。スゴイ話ですね。
1960年代のアルファ ロメオはさまざまなモデルを出し、デリバリー数が増えていたので、生産が追いつかなくなり、TZ1はアルファ ロメオのレース部門であるアウトデルタが組み、最終調整をアルファ ロメオが担当して出荷していました。ということもあり、TZ1の車両重量は660kgで、それでいて100Lも入るタンクを積んでいます」
と語ってくれた川瀬さん。ちなみに、オリジナルのエンジンを降ろして保管しており、いまはGTA用のツインプラグ仕様を積んでいるそうだ。
SZはアクセルが軽く、1300ccエンジンの吹け上がりもいいので驚くほど軽快に走ることができ、いっぽう1600ccエンジンを積んでいるTZ1はトルクがあり、公道でもサーキットでも乗りやすい、とも話してくれた川瀬さんは日本屈指の自動車趣味人といえる。これからも珠玉のクラシックスポーツカーを増やし、後世に遺してくれるだろう。