ビショップの街へ向かう途中でスマホ紛失!
山を降りると、ガスステーションと何軒かの店がポツポツとある、名前も知らない町に出た。早朝にキャンプ場を出たため、まだ10時だ。さすがに疲れた。手頃なレストランがあったので食事をすることにした。ブルーベリー・パンケーキとコーヒーを注文。なかなかおいしい。コーヒーのお代わりを飲み干したときには、すっかり気持ちが落ち着いていた。
レストランの向かいにスポーツギアを売る店があったので覗いてみた。義父へのプレゼントにスキー用の帽子を購入した。まったくの安物で申し訳ない! ついでに薪を買うことにした。斧がないので、なるべく使いやすく割れている束を探す。十分に吟味してひと束をチョイスした。
ビショップまでは、まだ砂漠の道が100km続く。ゆっくりと行って1時間半だろう。と、町を出てすぐに携帯電話がないことに気がついた。レストランに置き忘れたに違いない。慌ててUターンして店に戻った。
ところが、そこに携帯電話はなかった。スタッフが電話を鳴らしてくれたが、呼び出し音は聞こえない。見つかったら連絡してくれるようにAKIRA隊長の電話番号を渡す。次は道路を横断してスポーツショップだ。帽子売り場のあたりを探してみるが、ない。ここでも隊長の電話番号を渡して店を出る。
どうしよう? 電話やナビが使えない不便も大きいが、帰国の際のワクチン接種証明もなくなってしまった。目の前が真っ暗になった。しかし、もうこの町でできることはない。早くWi-Fiがあるビショップの街に行き、必要な人に連絡をすることにした。
救世主は「iPhoneを探す」アプリ
ビショップのデニーズに駆け込み、まずオークランドで泊めてくれたジェシにメールを打った。電話の中に入っているのは、彼のSIMカードだ。悪用されないように止めてもらわなければならない。次にAKIRA隊長にヘルプを頼んだ。レストラン、スポーツ店から連絡があるかもしれないと伝えた。
食べたくもないデザートを口に入れながら数人に連絡をしていると、ジェシから返信があった。「アドベンチャーが続いているね」とジョークで始まり、その後に「iPhoneを探す」のアプリを使ったら、とのアドバイスが続いていた。そうだった! その機能があることを今ごろになって思い出した。
さっそく、検索をすると、スポーツ店のあたりに電話があることが分かった。隊長に電話を入れてもらい、Wi-Fiがある安モーテルで返事を待つことにした。
レンタカーで片道100kmを走ってスマホ回収!
傷心を癒すためにプールに飛び込み、ビールを飲んでいると、夕刻、隊長から「スポーツ店で携帯が見つかったよ」と朗報が入った。朝8時にショップがオープンするので、それ以降に来てくれ、という伝言だった。よかった。まずはほっとした。
隊長夫妻とのローンパイン・ビジターセンターでの待ち合わせは正午。計算上はなんとか間に合うはずだ。しかし、ドルのスピードではとても無理。そこでレンタカーを借りることを思いついた。モーテルの親父に相談すると、近くにエンタープライズ(大手レンタカー会社)があるという。
インターネットでトヨタの何とかいうコンパクトカーを予約。翌朝、オープン直後の8時過ぎにレンタカーをピックアップした。そして、片道100kmを弾丸往復して10時半にモーテルに戻った。ぼくの携帯電話は焚き火用の薪のラックに落ちていた。かがんで薪を探しているときにポケットから落ちたに違いなかった。
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