マセラティ・スパイダーの歴史を展開
幕張メッセで行われたAUTOMOBILE COUNCIL 2023では、ヘリテージカーと現行モデルを新旧対比させる展示が多く見られました。創業以来数奇な運命をたどり、現在ではステランティス傘下の独立企業。いちブランドとしてクアトロポルテやギブリなどの人気モデルを製造しているマセラティでも同様に、ヘリテージカーと現行モデル、2台のマセラティを展示していました。
風にちなんだ最初のクルマと現行モデル
マセラティの今回のテーマは『マセラティ・スパイダーの歴史』。実はマセラティには“風”に因んだ車名が多く、現行モデルのギブリは「リビアの高地から地中海に吹き込む埃交じりの熱風」、初のSUVであるレヴァンテは「地中海からジブラルタル海峡に吹き抜ける東風」に、それぞれ由来しています。
過去のモデルにもミストラル(アルプス山脈からカマルグ周辺の地中海に吹き降ろす寒い北風)やボーラ(アドリア海やギリシャ、トルコなどで北から吹き降ろす風)、カムシン(北アフリカなどで吹く砂塵嵐を伴った熱風)などが有名です。そんなマセラティだけに、人気を博したオープンシーターに着目したテーマには注目が集まっていました。
展示された2台のうち、ヘリテージカーは1964年に登場したミストラルのスパイダーが“風”に因んだ車名の最初の例となっています。車名は「南仏に吹く季節風」にちなんでいます。もう少し詳しく紹介すると、その前年に登場した2座クーペのミストラル・デュエポスティをベースにしていて、クーペと同様にスパイダーもピエトロ・フルアがデザインとボディワークを手掛けていました。
ちなみにクーペ版のデュエポスティ(Dueposti)はイタリア語で2座の意を持っていますが、これは4ドアセダンのクアトロポルテ(Quattroporte=伊で4ドアの意)と同様のネーミングです。それにしても、日本国内ではあまり魅力的ではないとされる4ドアというネーミングが、憧れの対象となるマセラティは流石です。ミストラルのスパイダーは、展示車両の3.5L以外に3.7L、4Lが選べ124台が生産されています。
MC20チェロは空力に優れたボディデザイン
展示されたもう1台はMC20のスパイダーともいうべきチェロ(Cielo。伊で空の意)です。2022年5月に発表され、今回のAUTOMOBILE COUNCIL 2023が日本国内での初お披露目となりました。2020年に発表されたMC20は、ホモロゲーションモデルとして2004年に登場したMC12の後継と位置付けられていて、MC12がレースに参戦するためのホモロゲーションモデルだったのに対して完全なロードカーとなっています。
MC(マセラティ・コルセ=Maserati Corse。伊でマセラティ・レーシングの意)のネーミングを継承したハイパフォーマンスモデルは、マセラティが22年ぶりに独自開発し、ネットゥーノ(Nettuno。伊で海王星の意)と命名した3L V6ツインカム(V6だから4カム)ツインターボエンジンをミッドシップに搭載。F1GPなどでも広く採用されているプレチャンバー(副燃焼室)システムを採用したエンジンのパフォーマンスは、最高出力630psと発表されています。
2シーターのクーペ・ボディはFCAチェントロ・スティーレのクラウス・ブッセがデザインし、本社のあるモデナで生産されていて100%メイド・イン・モデナを標榜しています。ちなみにレーシングカーのコンストラクターとして成功を収めたダラーラ社が開発に携わり、空力に関しては同社の風洞設備を使って研究が続けられた結果のデザインとなっていて、ウイングやスポイラーなどを追加することなく空力に優れたボディデザインとなっています。
またバタフライドアを採用したのは、マセラティとして初めてでしたが、このMC20チェロもバタフライドアを継承。ガラスを使ったルーフがデタッチャブル式となっていて、マセラティでも『スポーツ性とラグジュアリーの完璧な融合を実現した』としています。今回のAUTOMOBILE COUNCILにおけるマセラティ ジャパンのブース展開はミストラル スパイダーとMC20チェロ。たった2台だけの展示となりましたが、テーマである『マセラティ・スパイダーの歴史』を十分に訴求した演出だと印象付けられました。