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「Gクラス」にはない一体感! BMW新型「XM」は史上最強のSUVなのか、アリゾナで一足先に試乗してみた

XMの走り

オンロード走行性能を高め、サーキットでの本格的な走行も可能とした、Xモデル初のM専用モデル。価格は2130万円となる

M史上最強のSUV現る

約半世紀ぶりとなるBMW M専用モデルは、時代に合わせてSUVで登場。コンセプト的には「X7」のクーペ版となる「スーパーSUV」にアメリカ・アリゾナで試乗しました。Mモデル初のプラグインハイブリッドであり、M史上最強パワーを誇る、その走りとは?

乗れば「スーパーSUV」にした理由がわかる

「M1」以来、およそ半世紀ぶりのM専用モデル、などと言われてもSUVじゃピンとこない。そう思われたクルマ好き、ビーエム好きも多かったに違いない。そのうえ「XM」などといきなり言われても、憧憬はおろか敬虔の念も湧いてこない。「M8」と言われれば、8シリーズのすごいやつね、とすぐに分かる。比べて、XMってそもそも何だ?

もちろん、そのサイズやスタイルからもわかる通り、コンセプト的には「X7」のクーペ版、「X5」に対する「X6」のような存在がベースとしてあった。一時期ウワサされた「X8」である。開発のどこかの段階でX8Mのみがデビューすることに。X8というスタンダードモデルが出ないのだから、とX8M改めシンプルにXMとした。

M1のようなスポーツカー、スーパーカーを期待していたのに。そんな疑問をMの首脳にぶつけてみれば、「時代が違う」という答えが即座に返ってきた。M1が生まれた時代は皆がスポーツカーに憧れていたし、普段乗りにはセダンかワゴンでSUVが特殊だった。今は逆だ。SUVがフツウでセダンやワゴンの方が少数派になりつつある。だからSUVで専用モデルを作ったのだ、と。

理屈的にはわかる。わかるけれど、やっぱりスポーツカー好きとしては腑に落ちない。スポーツカーマーケット、もっというとハイエンド高性能車市場はいうほどシュリンクしていない。スーパーカーブランドによるビジネスは確立され、その数も増えているじゃないか。弱気だな。BMW M好きとしてはちょっと不満だ。「M5」ベースの「Z8」のような企画でもいいから久しぶりにMのスーパースポーツを見たかった。

それでも実際にXMに乗ってみれば、彼らがM専用モデルとしてスーパーSUV市場に討って出た理由もよくわかった。乗り味のユニークさという点で秀でたスーパーSUVだったからだ。


■BMW「Mシリーズ」のすべてがここに!

硬質な乗り心地は相当に硬派

XMの国際試乗会はアリゾナ州スコッツデールで開催された。ちょうど3年前に新型コロナが出始めの頃、「X5M」と「X6M」の試乗会を開催した場所だ。コロナの3年間をなかったことにすることはできないけれど、気持ちをリセットしてもう一度前を向こうという趣向だろうと勝手に感慨深く思ったりもする。

ずらりと並んだXMの姿に感嘆した。ものすごい迫力だ。写真で見るよりもはるかにデザインにはまとまりがある。もっとも新しいデザインなんてものは話題を振りまいてナンボ。たとえ賛否両論の否が圧倒的に多くても、話題になった方の勝ち。いずれにしてもハイエンドモデルだ。10人みんなが受け入れた挙句「いいね!」で終わってしまうデザインより、ひとりの熱狂的なファンがついて買ってくれる方が良いに決まっている。

開発者によると、北米、中東、中国、そして韓国が主流のマーケットらしい。なるほど。これらのマーケットで絶大な人気を誇るメルセデスAMGの「Gクラス」がライバルだ。

威圧感たっぷりのスタイル。それゆえ乗り込めば気分がなぜか昂る。これが大型SUVの醍醐味というもので、自分が大きくなったように感じるのだ。このデカいやつを操るという感覚が心地よくて皆、大きなSUVに乗りたがるのではないか。

もっともド派手な外観とは裏腹にインテリアはそつなく最近のビーエム流にまとめられたという印象だ。Mハイパフォーマンスモデルなのでシフトレバーもあって、最新の「3シリーズ」よりコンサバ。

エンジンと電気モーターを持つハイブリッド高性能車の流行りは、従来からのドライブモード選択に加えてモーターの使い方を変えるハイブリッド系モードを用意すること。XMもさまざまな設定が可能で、まずはハンドル・サスペンション・パワートレーンを「コンフォート」に、Mハイブリッドモードを「ハイブリッド」にして走り出す。

ちなみにMハイブリッドモードには他に「エレクトリック」と「eコントロール」があり、後者はつねに充電を行ってバッテリーの電気を確保するモードで、「ハイブリッド」に比べてドライブフィールにはやや雑味があった。前者は電動モードで、フル充電であれば約80km(WLTPモード)をモーターのみで走行できる。

迫力あるエンジンサウンドでMらしさを味わう

今どき珍しい爆音とともにV8エンジンが目覚めた。ひとしきり唸ったのち落ち着いたところで走り出せば、しばらくはエンジンが掛かったり掛からなかったりと少々せわしない。さらにそのあまりに硬質な乗り心地に同乗した同業者と思わず目を見合わせた。

試乗車が履いていたのは標準の21インチではなく、また話題のオプション23インチでもない22インチタイヤ&ホイールで、じつはタイヤ銘柄も含めると最もスポーティな仕様らしい。そのせいか街中での乗り心地は相当に硬派だった。それでも巨体が震えるような無作法はない。しばらくは電気モーターとエンジンの精緻な組み合わせ制御を味わいつつドライブした。力は十二分だ。

交通量の少ないワインディングロードで各種モードをスポーツに。パワートレーンだけはスポーツ+にセットした。489ps&650Nmを発揮する4.4L V8ツインターボエンジンに197ps&280Nmの電気モーターを加えた、653ps&800Nmという圧倒的なシステム性能を誇るM史上最強のパワートレーンをいよいよ解放する。

アクセルペダルを踏み込めばV8エンジンが瞬時に反応し、唸りをあげて力を発揮する。エグゾーストノートは凄まじいばかりで、広大なアメリカの大地を走っている最中であることに感謝した。エンジンの回転フィールは精緻でありながら、均質なざらつきがあって心地よい。

速度域が70km/hを超えてくると、硬質な乗り心地がかえって頼もしく思えてくる。ワインディングロードではまるでスポーツカーのように自在に動き、そして速い。一体感もある。なのに、じつは大きなクルマを駆っているという印象がずっとあるのだ。普通はサイズをひとまわりくらい小さく感じることが多いが、それもない。大きいまま一体となって走る。それはとてもユニークな乗り味というべきで、他では経験できない類のもの。Gクラスは確かに大きなクルマ感はある。けれども一体感などない。

これぞまさにスポーツとラグジュアリーの両立、Mの目指すところだ。クルマ運転好きならば、見てくれの好き嫌いは別にして、乗れば絶対に欲しくなる。BMW XMにはそんなドライブフィール、ライバルたちにはない魅力があった。

■BMW「Mシリーズ」のすべてがここに!

●BMW XM
ビー・エム・ダブリュー エックスエム
・全長:5110mm
・全幅:2005mm
・全高:1755mm
・ホイールベース:3105mm
・車両重量:2710kg
・エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
・排気量:4395cc
・駆動方式:四輪駆動
・変速機:8速AT
・エンジン最高出力:489ps/5400-7200rpm
・エンジン最大トルク:650Nm/1600-5000rpm
・モーター最高出力:197ps/7000rpm
・モーター最大トルク:280Nm/100-5500rpm
・システム最高出力:653ps
・システム最大トルク:800Nm
・0-100km/h:4.3秒
・最高速度:270km/h
・公称燃費:1.6-1.5L/100km
・ラゲッジ容量:527-1820L
・燃料タンク容量:69L
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)フィックス6ピストン、(後)1ピストン
・タイヤ:(前)275/40R22、(後)315/35R22
(欧州仕様)

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