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5億円オーバー! フェラーリの元祖スペチアーレ「288GTO」はなぜ生まれた? 高額落札の理由とは

5億円オーバー! フェラーリの元祖スペチアーレ「288GTO」はなぜ生まれた? 高額落札の理由とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: (C)2022 Courtesy of RM Sotheby's

北米に正規出荷された貴重な1台

このほど“AMELIA ISLAND”オークションに登場したシャシー56773は、1984年から1985年にかけて272台生産されたフェラーリ288GTOのうちの1台。シャシーNo.は#56773で、1985年5月3日にマラネッロ工場からアメリカに向けて出荷された。

ボディカラーは、このモデルで唯一の選択肢だった“ロッソ・コルサ”。キャビンはブラック・レザーで覆われ、“デイトナ・スタイル”のシートにはオプションで赤いファブリックが挿入されていた。エアコンとパワーウインドウを装備していたが、このモデルのレーシングDNAを尊重したのか、純正ラジオは装備されなかった。

北米のフェラーリ正規代理店による手続きを経て、イリノイ州のディーラー、“レイクフォレスト・スポーツカーズ”社を介して、フロリダに住む最初のオーナーに新車として販売された。付属のフェラーリ保証書により、1985年6月10日に引き渡されたことがわかる。

フェラーリの世界的権威として知られるマルセル・マッシーニ氏のレポートによると、フロリダ時代の#56773は静かな生活を送ったようで、1991年8月にはカリフォルニアの“ウォルナット・クリーク・フェラーリ”から売りに出された際のオドメーターは3388kmに過ぎなかったという。そののち、今世紀初頭まで東海岸および西海岸のフェラーリ愛好家のもとを行き来したものの、2001年に4人目のオーナーに売却された時のオドメーターも、まだ4517kmを記していたとのことである。

そして、今回のオークション出品者でもある4代目オーナーのもと、この288GTOは20年以上の時を過ごすとともに定期的に点検を受け、それに対応する走行距離の記録も残されている。詳細な請求書はファイルにあり、2020年7月31日に完了した大規模なサービスが記載されている。

イリノイ州の“コンチネンタル・オート・スポーツ”で行われた作業では、すべての液体を交換し、タイミングベルトを含む全ベルト類も交換。ウォーターポンプとスパークプラグも新品に換えるために、1万8000ドル以上が費やされた。最後に、新品のピレリPゼロ・タイヤが装着されたのだが、この時のインボイスには整備時点の走行距離が7815kmと記されていた。

そしてシャシー#56773が受けた最新のサービスは、2022年1月31日に同じくコンチネンタル・オート・スポーツにて。この時は、オイルおよびブレーキフルードの交換と油圧計センサーの交換が含まれていた。

この個体で重要視すべきは、すでに“フェラーリ・クラシケ”の認定を受け、完全なマッチング・ナンバーの例であると確認されていること。また、その保存状態の良さと生産時での正しいコンディションを物語っていることである。

アメリカ連邦政府の認定を受ける際に、スピードメーターの文字盤がマイル表示に変更されながらも、オドメーターはキロメートル表示のまま。さらにクラシケ認証プロセスの必須要素として、正しいキロメートル表示のダイヤルを持つスピードメーターユニットが調達・装着されたことも、コンチネンタル・オート・スポーツが2022年8月22日付で発行したインボイスに記載されている。

期待を裏切らない高額落札となる

この1985年製288GTOは、オークションカタログ作成の段階ではわずか7989kmしか走っていなかった。また、正規ルートで北米に輸入された288GTOは非常にレアとされている。

フェラーリ・クラシケの認定に充分なドキュメント、定期的なサービス履歴、オリジナルの書籍やツールキットなど、あらゆる特性を網羅した#56773は、間違いなく最近のフェラーリ288GTOの中でもかなりの好条件であると謳われていたようだ。

そんなRMサザビーズ側の意気込みを裏切ることなく、競売では396万5000USドル(邦貨換算約5億2400万円)での落札という大商い。現状における288GTOのマーケット評価を裏づける結果となったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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