2023年はフルエントリーが決定
車いすレーサー・青木拓磨選手が今シーズンのレース活動を開始した。今シーズン青木選手が戦う場として選んだのが、「BMW M2 CS Racingシリーズ」である。去る2023年4月23日(日)、今シーズンの開幕戦が栃木県にあるモビリティリゾートもてぎで開催された。
車イスレーサーとしてさまざまなカテゴリーのレースに参戦
青木拓磨選手といえば、ロードレースの世界では、長男・青木宣篤選手と三男・治親選手とともに伝説の兄弟ロードレーサーとして知られた青木三兄弟の次男。1990年にロードレースにデビューし、1995年−1996年の全日本ロードレース選手権スーパーバイク・クラス連覇を果たす。1997年からはロードレース世界選手権(WGP)に出場し、非力なマシンを操りながらもランキング5位を獲得している。
マシンを一新して臨んだ1998年シーズン直前のテストで転倒、脊椎を損傷してしまう。その事故後は車いす生活を余儀なくされるが、レース活動のフィールドを4輪に移し、車イスレーサーとしてさまざまなカテゴリーのレースに参戦。2021年には「ル・マン24時間レース」への参戦も果たしている。
全6ラウンド12戦が予定されている
今回参戦する「BMW M2 CS Racingシリーズ」は、BMW M Motorsportのレース車両「BMW M2 CS Racing」を使ったワンメイクレースシリーズである。レース自体は、2022年にスタートした「BMW&MINI Racingシリーズ」に組み込まれる。もともと「MINIチャレンジシリーズ」というニューMINIのワンメイクシリーズがあったが、これに「M2 CS Racing Series」を混走させるという形で組み合わせたもの。
今シーズンも、全6ラウンド12戦が予定されている。開幕戦となるラウンド1の第1戦と2戦がもてぎで開催されたわけだが、以後、ラウンド2が富士スピードウェイ(第3戦・第4戦/5月13日・14日)、ラウンド3は岡山国際サーキット(第5戦・第6戦/6月24日・25日)、ラウンド4はスポーツランドSUGO(第7戦・第8戦/8月5日・6日)、ラウンド5は富士スピードウェイ(第9戦・第10戦/10月7日・8日)、そして最終戦となるラウンド6として鈴鹿サーキット(第11戦・第12戦/12月2日・3日)といったスケジュールである。
通常のレーシングカーと違ってブレーキサーボが付いている
今回青木選手はStudie AGから参戦することとなった。「BMW Team Studie」としてスーパーGTのGT300クラスに「#7 Studie BMW M4(荒 聖治/ブルーノ・スペングラー組)」で参戦している、BMW専門のカスタムカーショップである。
ゼッケン8をつけるBMW M2 CS Racingは、スーパーGTのマシンと同じデザインモチーフのMストライプを入れ込んだカラーリングとなっている。もちろん、Studie AGの代表である鈴木康昭氏も会場に駆けつけて、青木選手の走りを見守った。
BMW M2 CS Racingは、3L 直列6気筒Mツインパワー・ターボ・エンジンに7速 DCTを組み合わせたサーキット専用モデル。青木選手の乗る8号車には、イタリアのグイドシンプレックス社の手動装置を組み込み、左手でアクセルとブレーキ操作をする。ステアリングコラムにあるパドルを使い、右手でシフト操作を行う。通常のレーシングカーと違ってブレーキサーボが付いているため、踏力が軽減されるという点は手動装置を使う青木選手にとっても利点といえよう。
このBMW M2 CS Racingで、2022年にSROモータースポーツ・グループが運営しているシリーズ「ファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWS」に1戦だけスポット参戦しており、ドライブした経験はある。
今回はチームが異なるものの、ワンメイクの車両はイコールコンディションであり、青木選手が使う手動装置なども基本的には変わらない。また、このシーズン前に富士スピードウェイでの合同テストにも参加しており、準備を進めてきた。