英国タイガーレーシング謹製の激レア車タイガー6が新潟に存在した
2023年4月16日(日)、新潟・三条市の信濃川沿いのミズベリング三条(水防学習館)で、地産地消&町おこし的な手作りヒストリックカー・イベント「20世紀ミーティング 2023春季」が開催された。これはその名の通り「原則として2000年までに生まれたクルマならば二輪四輪問わずエントリー可能」というおおらかなミーティングだ。今回はこのイベントに集まった150台近くの参加車の中から、非常にマニアックなクルマとオーナーをご紹介する。
じつは数多いロータス・セブンのフォロワー的スポーツカー
もともとは、財布の軽いクラブマンレーサー向けの小型軽量スポーツカーとして生まれたロータス「セブン」。鋼管スペースフレームにアルミの外板を貼って必要最小限のロードイクイップメントを備えただけというシンプルなセブンの構造は、デビューした1957年の時点ではフォーミュラ/レーシングカーとほぼ同じ。実際、英国を中心に世界各国のスポーツカー・レースで活躍した。
大量生産には不向きだが、金属パイプを溶接できる設備さえあれば小規模なコンストラクターでも製造が可能な鋼管スペースフレーム構造のクルマは、古くから少量生産のフォーミュラ・マシンやレーシングカーに多くみられた。モノコック・ボディが主流となった現在でも、ロータス・セブンをルーツに持つケータハム・セブンが今なお鋼管スペースフレーム構造を採用し続けていることはよく知られている。
快適な乗り心地や耐候性などを潔く捨て去り、走ることだけに特化したロータス・セブンは多くの小規模スポーツカー・メーカーに多大な影響を与えた。ロータス・セブンが提示した「スポーツカーの原点」ともいうべき世界を、多くの同業他社が追随したのはむべなるかな。かくして鋼管スペースフレーム構造にアルミやFRPの外皮を組み合わせた「ロータス・セブン的な」簡便なスポーツカーは地元英国を中心に、数多く誕生したのである。
グサグサな状態からレスキューしてレストア
「3年ほど前に群馬県内でグサグサな状態で見つけて、レスキューしたんですよ」
と語るのは、地元新潟県内から参加の佐久間さん。それまでにもバイクや古い欧州車とともにオイリーな趣味車ライフを送ってきた強者だ。
そんな佐久間さんの愛車は、一見しただけではケータハム・セブンに見えるが、さにあらず。同じ英国生まれのスポーツカーながらこちらはタイガーレーシングというメーカーの「タイガー6」と呼ばれるクルマだ。タイガーレーシングとは、1989年に創立されたイギリスの小さなメーカーで、フォード「コーティナ」や「アングリア」、「エスコート」などのメンテナンスやレストアを手がけると同時にオリジナルのスポーツカーもいくつかリリースしており、このセブンに似たタイガー6もそのひとつ。
タイガーならではのこだわりが随所にみられる
このタイガー6は1994年式で、エンジンはケータハムなどにも採用されている英国フォードの225E、通称ケント・ユニットと呼ばれるお馴染みの4気筒OHVだが、排気量はケータハムの1600cc/1700ccではなく1650cc。サスペンションの形式などもタイガー6独自のもので、大きく張り出したリアフェンダーの形状によって3ナンバー・サイズとなっている。また、ケータハムなどと異なりエンジン・カウルなどもアルミではなくFRP製なのは、かつての「ウェストフィールド7」などにも通じる作りだ。
彼女さんもレストアを手伝ってくれた
「タイガーレーシングは家族経営の小さな会社なので、レストアにあたってのパーツ手配などはきめ細かく対応してもらえました。ちなみにレストアする際は、助手席に乗ってきた彼女が内装を手がけてくれたのですよ」
と語る佐久間さん。イベント当日は時おり風雨が強まるあいにくの曇り空だったが、そんな悪天候下で旧車オープンカーの助手席に座ってくれる女性というだけで貴重。それどころかレストア作業にも参加していたとは。仲良くイベントに参加するそんな佐久間さんペアとタイガー6の取り合わせは、まさに本場のバックヤードビルダーのライフスタイルを思わせる、羨ましくも微笑ましいものであった。