VITAのシリーズは今シーズンも大盛況
ワンメイクシリーズが全国各地のサーキットで展開されている。そんな中でも着実に参加人口も増えているひとつに、VITAレースがある。これは、数々の名レースマシンを手掛けてきた日本のレース・コンストラクターのひとつ、VITA CLUBのオリジナルマシン「VITA-01」を使用するワンメイクシリーズだ。
シリーズ戦以外に「VITA-01」を使用したレースは多い
2010年から鈴鹿サーキットでのワンメイクレースがスタートし、現在国内では、北海道の十勝スピードウェイ、栃木のモビリティリゾートもてぎ、静岡の富士スピードウェイ、三重の鈴鹿サーキット、岡山の岡山国際サーキット、大分のオートポリスの各サーキットでのシリーズ戦。そして、もてぎと筑波サーキット、千葉の袖ケ浦フォレストレースウェイを巡る「VITA Trophy Race」という7つのシリーズが開催されている。
また、通常のシリーズ戦以外にこの「VITA-01」を使用した耐久レースが、オートポリスで「マジ耐」、十勝でも「十勝3H」という単独で開催されているが、2023年からは「MEC120耐久シリーズ」という鈴鹿・富士・岡山・もてぎを回る2時間の耐久シリーズが新たに発足してもいる。他にも「VITA-01」を使用したKYOJO CUP(競争女子選手権)やレジェンドカップなども開催されていて、競技人口は非常に多い。
比較的安価なレーシングマシンとして人気がある
2009年に登場した「VITA-01」は、パイプフレームとセミモノコック構造のオリジナルシャシーに1.5Lエンジンをリアに搭載する。フロントフェイスには異なる3種類のタイプのカウルを用意している。非常に敷居の低い入門レースマシンとしての認知も進んでいるのだ。
敷居が低いレースというとナンバー付き車両というイメージを持つ人も多いだろうが、レーシングガレージに車両を預けるのならば、あえてナンバーを付けた車検対応の車両という選択をする必要もない、とも言える。
現在、VITAの公式レースにはダンロップのワンメイクタイヤが指定されているが、今シーズンからそのタイヤも新しい構造の「DIREZZA V01」に切り替わっており、また新たな戦いが期待される。
エントリー層は初心者からベテランまでいる
2023年4月23日(日)、モビリティリゾートもてぎでは、もてぎシリーズの第3戦であり、VITA Trophyシリーズの開幕戦となるVITAの一戦が行われた。ここにはVITAもてぎシリーズを追いかける選手、そしてトロフィのほうに参戦する選手がエントリーし、その参加台数は20台にも及んだ。各地のVITAレースでも言えるのだが、VITAに長年参戦をしている古参メンバーも多いが、それとは別に、レーシングドライバーを目指す若手や、他のカテゴリーでの参戦とは別に新たにこのVITAに興味を示し参戦を開始する選手も毎年少なからずいる。
今回は20台のエントリーのうち、4人の選手がもてぎでのVITAレース初参戦という。この4台には、長年のブランクの後にレースへ戻ってきた選手がいたり、他のレースの開催数が減少したためその代わりに参戦を開始する、というような選手もいる。また、自身のドライビングをもう一度見つめなおすために、という参戦もあった。
そんな4月の一戦、ポールポジションを獲得したのは、2分13秒186のタイムを出した#8 イシカワヨシオ選手(東京IRCvivoニルズVITA)であった。1月に腰を手術したばかりでまだ回復途中と腰をかばいながらの予選だったが、今シーズン開幕戦に続く今季2度目のポール獲得となった。腰を痛めているにもかかわらず、2022年後半のもてぎシリーズでは、第4戦(決勝は7位)、第5戦(決勝は6位)でポールポジションを獲得していた。
一発の速さを見せているものの、フルコース 4.8kmを10周する決勝レースではいまだ未勝利。
「後ろを気にしちゃうし、途中で集中力が切れちゃうんだよねぇ」と、勝利には結びついていない。ちなみに過去最高位は、そして昨年のもてぎ開幕戦での2位。残るは優勝のみ、となっていた。
今回のレースでは、強敵#21 いむらせいじ選手(オートルックVITA-01)が予選2番手。もてぎシリーズ開幕2連勝中の#2 イノウエケイイチ選手(ワコーズEDニルズVITA)が予選3番手と、グリッドではPPのイシカワ選手を取り囲んでいるカタチとなる。
今回の決勝レースも、スタートから猛ダッシュを見せたイシカワ選手だったが、ライバルたちが簡単には引き下がらず、2周目には#2 イノウエ選手が先行することに。しかし、イシカワ選手はこれに食らいつき3周目にこのトップ2台が接触。そこでイノウエ選手はスピンを喫しここで大きく順位を落とし、イシカワ選手が再びレースをリード。その後イシカワ選手はしぶとく走り切り、ついにVITAもてぎでの初優勝を飾った。
悲願の優勝を遂げたイシカワヨシオ選手、御年66歳である。熟年レーサーに希望を与える一戦となった。