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BMWの「キドニー・グリル」が大きくなったのは今に始まったことではない! バリエーション豊富な「ブタ鼻」の歴史を振り返ろう

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: BMW AG

  • 生産された2002シリーズ

キドニー・グリル誕生から90年、いくつもの転機が訪れたヒストリー

「キドニー・グリル」、つまり腎臓型グリルという少々変わった愛称で呼ばれるBMWのキドニー・グリルは、その誕生から約90年を経た今なおBMWの象徴であり続けている。近年では、第2世代の4シリーズおよび現行M3に採用された縦長キドニー・グリルの大胆不敵なデザインで賛否両論を巻き起こしたのだが、じつはこれも歴史的なモデルからデザインを受け継いだものという。つまり、歴史と伝統を体現したものとのことなのだ。ここでは、キドニー・グリルの誕生と変遷に焦点を当て、その歴史を振り返ってみよう。

1930年代に生まれたキドニー・グリルは縦長だった

1927年に自動車生産に乗り出して以来、英オースティン「セブン」のノックダウン生産車を生み出してきたBMW。初の自社オリジナルモデルとして1933年に誕生させた「303」は、現在に至るBMWのアイデンティティとなっている2つの要素を早くも備えていた。ひとつめは、BMW初の直列6気筒エンジンを搭載したこと。そしてふたつめは「キドニー・グリル」の愛称で親しまれる独創的なグリルデザインである。

ラジエターがフロントエンド中央に屹立していた時代、センターバーによって左右に分割されたグリルはさほど目新しいものではなかった。しかし、上部と下部に丸みを帯びた2本の縦長グリルを並べるキドニー・グリルは、当時の人々にとても強いインパクトを与え、当時はまだ新興勢力だったBMWブランドの認知にも貢献したという。

その後、第二次世界大戦が勃発するまでのBMW製乗用車は、流線型の世界的流行に対応しつつも、戦前BMW最高傑作とも称される「328」を含むすべてのモデルで、この独創的なグリルが採用されることになる。

1950年代の507で水平デザインが登場

第二次大戦後、復興を遂げようとしていたBMWでは、戦後の第1作「501/502」でも縦長キドニー・グリルを採用するが、キドニー・グリルにとって最初の転機となったのは1955年にデビューしたV8エンジンのリアルスポーツ「507ロードスター」。水平にレイアウトされた大型エアインテークを備えた最初のBMWである。これは、キドニー・グリルのデザインについても創造的な自由を表現しようとしたデザイナー、アルブレヒト・フォン・ゲルツの手によるもの。1990年代以降に立ち上げられたさまざまなプロジェクトとともに、後世のBMW所属デザイナーたちにも引用されることになった。

1960年代のノイエ・クラッセで2つの縦長キドニーが一体化

しかしそれ以上に大きなインパクトとなったのは、1961年にデビューした「ノイエ・クラッセ」こと「1500」。一時は不振に喘いでいたBMWを復活させた歴史的大ヒット作である。1500およびその派出モデルである「1600/1800/2000」のキドニー・グリルは、2つの縦長キドニーが初めて一体化され、フロントの車幅いっぱいに拡がる2つの水平グリルの間に配置された。このデザインは1966年から生産された「02」シリーズ、「2500」から始まる大型セダンおよびクーペ(ともに1968年~)など、1980年代に至るまでBMWの中核モデルのフロントデザインにおけるパイオニアとなった。

M1で採用された「史上最少のキドニー・グリル」

一方、1978年に発表されたBMW初のミッドシップ・スポーツカー「M1」は、キドニー・グリルのデザインに関してもエポックメイキングなモデルとなる。ミッドシップゆえにノーズが非常に薄くなることから、フロントバンパー内にキドニー・グリルと水平型エアインテークを組み込むように配置。その結果、史上最小のキドニー・グリルが生み出された。

イタルデザイン-ジウジアーロ作品として知られるM1は、BMW所属デザイナー、ポール・ブラックのデザインで1972年に製作されたコンセプトカー「BMW Turbo」にインスパイアされたもの。このキドニー・グリルのデザインは、「Z1」(1988年)や初代E31系「8シリーズ」(1989年)など、1980~90年代のニッチなスポーツモデルのフロントデザインにも影響を与えることになった。

■もっとディープなBMWの世界はこちら

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