走行距離1300kmのF50
さきごろ“AMELIA ISLAND”オークションに出品されたF50は、シャシーナンバー#03501。プロダクションプレートから確認できるように、36台目のF50として製造され、1995年6月に製造者証明書が発行された(そのコピーはファイルに保管される)。そしてフェラーリの世界的権威、マルセル・マッシーニ氏の調査によると、1995年10月に実際の組み立てが開始され、2カ月後に完成したことが明らかになっている。
香港の“オート・イタリア”社を通じて販売されたこのF50は、地元の愛好家に新車としてデリバリーされ、そのファーストオーナーは27年もの間、所有し続けたと言われている。請求書にあるように、ほとんど走行することなく、地元のショップである「マスケティア・モータースポーツ」で時おりメインテナンスを受けていたようだ。
落札価格は驚異の6億7000万円オーバー!
2022年5月、この#03501はイギリスの著名なフェラーリ・スペシャリスト“DKエンジニアリング”社に引き渡され、すべてのシステムとコンポーネントを最適な状態に戻すリフレッシュを施工。このときステアリングラックやラジエーター、サスペンションのオーバーホール、ホイール、インテリアの再仕上げなどが行われた。2022年11月に完成したこの作業は、ファイルに含まれている請求書によると総額6万2000ポンド以上にのぼったという。
なお、2020年に「フェラーリ・クラシケ」から正規の認証を受け、シャシー、エンジン、ギアボックス、コーチワークがマッチングナンバーであることを証明するレッドブックが発行されている。
オークションカタログ作成時の走行距離は、わずか1342km。また、出品直前にさらなる整備を受けたばかりこのF50には、キャンバスバッグに入ったソフトトップ、スケドーニ社製のラゲッジセット、ハードトップ用のフライトケース、フラッシュライト付きのオーナーズマニュアル、写真集、ツールキットなど、純正の付属品がすべて完備している。
このようなローマイレージで、27年間もの長きにわたってシングルオーナーの恩恵を受けてきた、ある意味「無垢な」F50に出会うことは、実に稀な機会といえよう。
最高のクルマを求めるフェラーリ・エンスージアストや、マラネッロ製「ビッグ5」ハイパーカーのコレクションの隙間を埋めることを切望しそうなコレクターを対象とした競売では、大方の予想どおり500万ドル超えとなる506万5000ドル。すなわち日本円換算で約6億7200万円という、驚くべきプライスで落札されることになった。
フェラーリの「ビッグ5」の覇権は、この先もしばらく継続するとみて間違いない。そう実感させる、オークション結果となったのである。