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渋色フェラーリ「ディーノ」が1億円オーバー! 赤から銀へ変更されても評価の下がらない「正しいレストア」とは?

渋色フェラーリ「ディーノ」が1億円オーバー! 赤から銀へ変更されても評価の下がらない「正しいレストア」とは?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2022 Courtesy of RM Sotheby's

色替えしても、センスと技術力があれば高い評価を受ける?

このほど“AMELIA ISLAND”オークションに出品されたディーノ206GTは、シャシーNo.#00136。フェラーリの公式生産記録によると、新車時には“ロッソ・キアロ(明るい赤)”に黒ビニール/赤ファブリックのコンビ仕立ての内装で仕立てられ、1968年8月30日にマラネッロの本社ファクトリーから出荷。同日にミラノの“クレパルディ・アウトモービリS.a.S.”社に引き渡されたのち、数週間後にクレパルディから最初のオーナー、イタロ・ムジコへと納車されたことが判明している。

ムジコはその後4年間にわたってディーノを愛用し、1972年にイタリアに駐在していたアメリカ人軍人のドン・グリッグ大尉に売却した。その後、アメリカに戻ったグリッグは1974年にチャールズ・チャック・サデックに売却。彼はその後30年間、ディーノを保有することになる。

2004年以降は、カリフォルニア州で複数のオーナーのもとを行き来したのち、同州在住のジョン・ガンダーソン氏にこの206GTを売却することになった。そしてガンダーソン氏は、2013年にコンクール・コンディションを目指したフルレストアに着手する。

その後3年間、カリフォルニアの“ディーノ・レストレーション”社によって、この個体はアルミ合金製のベアシェルまで剥離され、現在の姿に修復された。

同社のアレンジと監督のもと、メカニズム部分はカリフォルニア州オーシャンサイドの“デューガン・エンタープライズ”。カリフォルニア州サンティのボディスペシャリスト“スピードゾーン”社は、“グリージオ・ノッテ・メタリッツァート(ナイトグレー・メタリック)”でペイントを仕上げたのち、ディーノ・レストレーションはブルー布のシートインサートと黒のビニール製で構成される、正しいインテリアを組み合わせた。

こうしてみごとなレストアが完了したのち、ガンダーソンは自慢の愛車として“第24回パームビーチ・カヴァッリーノ・クラシック(XXVI Palm Beach Cavallino Classic)”に展示するとともに、モントレーの“コンコルソ・イタリアーノ(Concorso Italiano)”に複数回出場。2017年にクラス2位を獲得している。

その後ガンダーソンは2018年に、マイク・シーハン氏の“FERRARI’S ONLINE”を経て、今回のオークション出品者でもある現オーナーのもとへやってきた。

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工場出荷時のカラーではなくとも高評価

シャシーNo.#00136は、現存するディーノ206GTの中でもっともコンディションが良く、もっとも正しいものに確実にランクされる。目を引くブラックとブルーのインテリアは、“ネズミの毛皮”と呼ばれる246GT以降のスウェード風クロスではなく、総ビニール張りとされたダッシュパネルや、ナルディ社製のウッドステアリング、ディーノ206GT純正のシフトノブによって補完されている。

V6エンジンはフェラーリ初となったマニエッティ・マレリ製電子制御イグニッションを搭載し、「Dino」と刻まれたマグネシウム合金製バルブカバーが取り付けられている。

そのほかにもロール状のソフトケースにまかれた純正ツールキット、FIAMM社製バッテリー、185/R14サイズのミシュランMXVタイヤ、14インチのクロモドラ社製アロイホイール、オーナーズマニュアル、保証書のブックレット、専用の純正ジャッキ、消火器、マニエッティ・マレリ社製ワイパーブレードなど、細部まで正確に再現されている。

このディーノ206GTに下された落札価格は86万8500ドル(邦貨換算約1億1400万円)であった。

前述のとおり、ボディ/インテリアともにクラシックカーの世界では望ましいとされる新車時のオリジナルカラーから替えられてしまってはいるものの、現在のカラーリバリーも純正として存在した組み合わせをセンス良く再現していること。そしてコンクール・デレガンスの常連となった素晴らしいコンディションも相まって、億越えの高評価が付けられたと考えられよう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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