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2億円オーバーの「ミウラ」には秘密があった! バルボーニ監修のアップデートは吉? それとも凶?

2億円オーバーの「ミウラ」には秘密があった! バルボーニ監修のアップデートは吉? それとも凶?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2022 Courtesy of RM Sotheby's

著名コレクターのもとを渡り歩いたミウラP400S

2023年2月の“PARIS”オークションに出品されたシャシーNo.#4155は、338台が生産されたといわれるミウラP400Sとしては、比較的初期に作られたものの1台。“ロッソ・ミウラ”と名づけられた濃いめの赤のボディに、黒のビニールレザー&ベージュのファブリックによるコンビ内装を組み合わせ、1969年8月6日にランボルギーニのサンタアガタ本社工場からラインオフした。

ファーストオーナーとなったのは、それ以前にP400を所有していたヴレヴィリエーリ博士。しかし、1970年1月にピエトロ・マンフリナート博士に売却されるまでの数カ月間のみをともに過ごしただけに終わった。

1971年4月にはウバルド・ガルデッリ氏が入手。同氏は1982年1月に“サッソ・カー”有限会社に譲渡されるまで、10年以上にわたってこのミウラを所有した。さらに1986年1月には、ボローニャ在住の著名なコレクターであるピエル・パオロ・アピチェッラ氏が購入した。このアピチェッラ氏の所有時代、1990年代半ばにボローニャのスーパーカー/クラシックカー専門工房“オフィチーナ・サウロ”社によって、初の修復が行われたと考えられている。

1999年には、当時ヨーロッパで最も重要なコレクションのひとつと目されていた“ニュッティ・コレクション(Gnutti Collection)”に加えられたのち、2014年5月に今回のオークション出品者でもある現オーナーへと譲渡されるに至った。

バルボーニ監修のもとのアップデート

そして2015年には、コンクール・デレガンスにふさわしい状態に仕立て直すためのレストア作業が行われることになる。現オーナーは、ランボルギーニの元チーフテストドライバーであるヴァレンティーノ・バルボーニ氏と密接に協議し、必要な改善点を明確化。添付されたヒストリーファイルの請求書からも明らかなように、モデナ近郊サルヴィオリにある“トップモーターズ”によるエンジンのオーバーホールを含む、3万1528ユーロ相当の整備を受けた。

くわえてこのレストアに際しては、VBことバルボーニ氏の助言により、ドライビングエクスペリエンスを向上させるため、後輪にはよりワイドな「P400SV」用ホイールとベンチレーテッド式ディスクブレーキが装備されている。

同じミウラでも、技術的に大幅な改良がくわえられた最終進化形にして、よりアグレッシヴないでたちのP400SVは3億円以上で取り引きされる事例が多いいっぽう、ヘッドライトに“まつ毛”のあるP400Sこそがミウラの決定版であると考えるサンタアガタ愛好家も少なくはないようだ。

しかしこの個体は、来歴やコンディションの面では申し分のないP400Sながら、昨今における同モデルのハイエンドよりはちょっと安めの158万ユーロ(邦貨換算約2億3500万円)で落札されることになった。

こういった大規模な国際オークションで入札が伸びない理由は、会場の雰囲気が予想ほどには盛り上がらないなど様々なものがあるのだが、この個体については、もしかしたらブレーキや後輪に施されたアップデートが、“ポロストリコ”的観点からすればオリジナリティを損ねていたという可能性も否めない。

それもまた、高級クラシックカーのオークションの難しくも面白いところなのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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