素朴な佇まいにスポーティな走りを秘めた「ジュリア1300TI」
2023年4月9日に埼玉県行田市の古代蓮の里で開催されたアルファ ロメオのミーティング「カフェ・ド・ジュリア2023」。ボクシーなセダンである初代「ジュリア」のなかでも渋いベージュ色をまとった「1300TI」を愛用しているオーナーに、クラシック・アルファの魅力を聞いてみた。
排気量やボディカラーより程度の良さで愛車をチョイス
「たくさんのヴィンテージカーが走る“マロニエランin日光”というイベントにナビとして参加しているうちに、どんどん洗脳されてきちゃったんですよ。そして、ナビとして参加するよりもドライバーとして参加したほうがさらに面白いだろうなと思うようになって、旧いクルマを増車することにしました。そう決意したときに、いまも愛用しているNA型ロードスターがすでに手元にあり、そのような状況でカニ目をチョイスしてオープン2シーターを増車するのはさすがにマズかろうと思い直して、家族4人で移動できる旧車を狙うことにしたんです。でも、自宅に設けたビルトインガレージはカニ目を入れる寸法で造っちゃったんですけどね」
そう話してくれた鈴木丈生さん(52歳)が2009年に購入したのは、1969年式のアルファ ロメオ「ジュリア1300TI」。ナルディのステアリングホイール(クラシックウッド)を装備しており、赤内装という点がポイントだ。エクステリアは1967年までの1300TIに付いていたグリルに変更しており、エンジンはフルオーバーホール済み。足まわりも刷新している。
「2年ぐらいジュリアを探していたのですが、知人の紹介で、のちに個人売買で買うことになる1300TIと出会ったんです。初代ジュリアだったら1600が欲しかったこともあり、1300は眼中になかったのですが、愛車のメンテナンスで長年お世話になってきた主治医からジュリアのベルリーナで程度が良いということが重要であって、排気量や外装色などについてはある程度妥協してでも決断しないと、いつになってもオーナーになれないと諭されました。それで、ジュリア1300TIを譲ってもらうことにしたんです」
意中の丸目4灯ヘッドライトでもなかったので、ジュリア1300TIを紹介された当初はモヤモヤしていたらしいが、内心、素朴な佇まいと内外装のコンビネーション自体は大いに気に入っていたらしい。
乗れば乗るほどアルファならではの奥深い走りを実感
若い頃は、さほど速そうに思えないクラシック・アルファ ロメオになぜ多くの人が夢中になるのかが理解できず、その趣味車としてのメジャー性からもあえて距離を置いていたのだという。しかし、ジュリア1300TIを愛車にしたことで、鈴木さんはアルファ ロメオならではの奥深さを知ることになった。
「現代のエコタイヤを履きながらもコーナーで路面を離さないうえに、追い込んでいくと深いロールを伴いながらも、むしろそこからさらに回り込んでいくようなジオメトリーの変化を実感できるわけです。そういったものが設計段階から盛り込まれていることを知り、どんどんその魅力に引き込まれていきました。一見なんの変哲もないボクシーなセダンにさらりとスポーツカーと同じ出自の心臓と足まわりを与え、大人4人が乗っても快適に移動できる実用性をも両立させてしまった60年近く前の造り手は本当にスゴイと思います。乗るたびに往時のエンジニアのニヤリとした顔が見えるような気がします」