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フェラーリ「308」が4000万円オーバー!? 高額落札の理由は「ヴェトロレズィーナ」だったからでした

リアには308GTBのエンブレムを装着

これまでの308GTBの市場価格を大きく上回るプライスで落札

かつては比較的リーズナブルな価格で推移していたことから、フェラーリ308GTB/GTSは“フェラーリ入門篇”として、ビギナーにとっても手の届きやすいモデルだった。ところがネオクラシックから真正クラシックカーの域に足を踏み入れた近年では、相場価格もじりじりと上昇しているようだ。そんな市況のもと、北米フロリダ州シー諸島アメリア・アイランドを舞台に毎年3月に開催される大規模コンクール・デレガンスに付随して、今年もRMサザビーズ北米本社の主導によって“AMELIA ISLAND”オークションが大々的に開かれたのだが、その競売に出品された308GTBが、注目すべき落札価格をたたき出した。

もっともマーケット評価の高い308GTB、ヴェトロレズィーナとは?

1975年のパリ・サロンにてデビューしたフェラーリ308GTB。その最初の数年間に製作されたモデルは、フェラーリ製ストラダーレ(ロードカー)としては特異なFRP製のボディを持つ。そしてこのFRP製の308GTBのことを、イタリアでは「Vetroresina(ヴェトロレズィーナ)」の愛称で呼ぶ。

「ヴェトロ」とはガラスのこと。そして「レズィーナ」はレジン、樹脂を意味する。つまりガラス繊維を樹脂で固めた「グラスファイバー」をそのままイタリア語とした、実は意外なほどにストレートなニックネームなのだ。

ボディの架装は、当時フェラーリ社の傘下に収まったばかりのカロッツェリア・スカリエッティが担当することになる。ところが、当時イタリアで吹き荒れていた労働争議のあおりを受けて、開発段階で使用を予定していたスチール製ボディパネルの生産が間に合わなくなる可能性が高まっていたため、発売当初はマラネッロ製ストラダーレとして初めての経験となるFRP製ボディが架装されることになったとの由。しかし、実際に308GTBの生産が軌道に乗ったのち、1977年6月以降の生産分は順次スチール製に置き換えられることになった。

ちなみにスチール化された当初は、公称データの車両重量は不変とされていた。しかし実際のヴェトロレズィーナの車重は約1100kgだったのに対して、スティールボディ車両は150kg~200kgほど重くなったといわれているようだ。

現在の国際クラシックカー・マーケットにおいては、308GTBシリーズの中でもスティールボディ+インジェクションの「308GTBi」のマーケット相場価格は比較的安価で、スティールボディ+キャブレター仕様の「308GTB」と、気筒当たり4バルブヘッドを与えられた最終型「308GTBクワトロヴァルヴォレ」がそれに次ぐ相場感となる。

それに対して「ヴェトロレズィーナ」は、多くの場合で最も高価な308GTBと見なされているのだが、今回のオークションでは、これまでにもまして高い評価が下されることになったのだ。

パリ・サロン出展車両を忠実に再現した個体に、4100万円のプライスが!

第24回RMサザビーズ“AMELIA ISLAND”オークションに出品されたフェラーリ308GTBヴェトロレズィーナは、1976年6月、ローマのフェラーリ正規ディーラーである“モトールs.p.a ローマ”社を介して、新車として初登録・納車された個体とされる。

ミッドシップに横置き搭載されるのは、ヨーロッパ仕様のドライサンプ潤滑式V型8気筒エンジン。この時代の北米カリフォルニア向け仕様のように、パフォーマンスを阻害する排気ガス対策が施されていないのが魅力的である。

ヨーロッパで10年ほど使用されたあと、1985年にミシガン州在住のフェラーリ愛好家によってアメリカに輸入され、2000年代初頭までこのクルマは彼のもとで管理されることになる。そしてユタ州在住のオーナー2人を経て、同州ソルトレイクシティの“キャヴァリーノ・イクイップメント・グループ”に売却された。

ここで同社オーナーのマイケル・コール氏は3年間にわたる本格的なレストアを開始。2017年末にこの個体の次なるオーナーによって完成された。このフルレストアに関する何百枚もの写真と請求書は、今回添付されたドキュメントに含まれている。

いっぽうメカニズム系の作業としては、エンジンとトランスアクスル、サスペンション、ブレーキコンポーネント、およびすべての付随的なシステムを完全に再構築した。また、メーターや電気系統もフルコンディショニングされ、インテリアはイタリアの“ルッピ・タッペツェリア”社から、純正スペックのレザーとウィルトンウールのカーペットを調達した。

メカニカルな部分をすべてリビルドしたのち、オリジナルの“アズーロ・メタリッツァート(明るいブルーメタリック)”で再塗装。内装はベージュの本革レザーで設え、ダークブルーのパイピングに縁どられたウィルトンウールカーペットに変更された。このカラーリバリーは、308GTBを世界に紹介した1975年のパリモーターショーの車両を忠実に再現したものである。

2019年にフェラーリ・クラシケを取得

このフルレストアに要した総費用は20万ドル以上と言われている。そのうえ、車体とエンジン、ギアボックスはすべてナンバーマッチングのまま残されているこの308GTBヴェトロレズィーナは、2019年にフェラーリ・クラシケによって正式認定を受けた。

また純正のツールロール、サービスブックレットと保護レザーウォレット付きのオーナーズマニュアル。そしてフェラーリ・クラシケの“レッドブック”が付属している。

ヴェトロレズィーナは生産台数が712台と少ないこともあって、もとより国際マーケットにおける評価は308GTBの中でも最高のもとなるが、さらに今回のオークションに出品された個体はハイエンドに属するコンディションと、たしかな来歴を持つ一台。

3月4日に行われた競売では、31万3000ドル(邦貨換算約4100万円)という、これまでの308GTBの市場価格を大きく上回るプライスで落札に至ったのである。

今後もフェラーリ308GTBの市場は高まる傾向にあるが、まずは今回のハンマープライスが、ある意味2023年における市況を占うことになるのは間違いあるまい。

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