装備の充実ぶりでもライバルよりも頭一つ抜けていた
今でこそ高級で大排気量エンジンを搭載したミニバンも珍しくなくなってきているが、1980年代ではまだそもそもミニバンという概念自体がなく、3列シートを持つ多人数乗車が可能なモデルは商用ワンボックスカーをベースとしたキャブオーバータイプとなっていた。
そのため、どちらかというとファミリーカーというよりは人員輸送がメインとなる業務用車両に近いものが多くなっていたのだった。もちろん当時も対面シートやフルフラットになるシートレイアウトなど、レジャーユースも睨んだ装備を持つモデルも存在していたが、走りの面では商用車の延長線上にある乗り物というイメージは拭えなかった。そんな折に登場したのが、1988年10月に3代目日産「キャラバン/ホーミー」の乗用モデルであるコーチに追加された「GTシリーズ」である。
3L V型6気筒エンジンを搭載
このGTシリーズにはガソリンエンジンとディーゼルエンジンが用意されているのだが、注目すべきはガソリンだ(ディーゼルエンジンも新開発の直4 OHVターボの2.7Lで100ps/23.5kgmというスペック)。
なんとガソリンモデルのGTシリーズに搭載されたのは、V型6気筒の3Lエンジン。出力は155ps/25.0kgmと現代のV6 3Lエンジンに比べると慎ましやかなスペックとなっているが、同時期のセドリック/グロリアにも搭載されていたV6エンジンが搭載されたという事実はかなりセンセーショナルな出来事だった。
ちなみにGTシリーズの最上級グレードである「GTリムジン」には、乗車人員や走行状況に合わせてショックアブソーバーの減衰力を最適に制御する荷重感応型電子制御サスペンションや、車速感応式電子制御パワーステアリング、バックドアオートクロージャ―、オートスピードコントロール装置(クルーズコントロール)などが標準装備。装備の充実ぶりでもライバルよりも頭一つ抜けていたのである。
ユーザーからの反響が大きかった
そして1989年8月には「GT」と「GTリムジン」の間を埋めるグレードとして「GTクルーズ」が新設され、1990年10月のマイナーチェンジのタイミングでは「GT」を除くGTシリーズのディーゼルモデルがインタークーラーを採用しパワーアップ。
さらに1994年1月には「GTクルーズS」、そして同年8月には「GTクルーズS リミテッド」が追加されるなど、矢継ぎ早にグレードの拡充がなされていたのは、それだけユーザーからの反響が大きかった裏返しと言えるだろう。
結局1997年5月にはこのGTシリーズのキャラクターを昇華させた初代エルグランドが登場し、大ヒット車種となったことを見ても、キャラバン/ホーミーのGTシリーズは先見の明があったことは明白。ちなみに初代エルグランド登場時の正式名称は「キャラバンエルグランド/ホーミーエルグランド」であり、この点を見てもキャラバン/ホーミーのGTシリーズの後継車種であることが分かるのだ。