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スーパーカーブームの陰に隠れた名車マセラティ「ボーラ」が1700万円弱! いまならまだ夢じゃない

スーパーカーブームの陰に隠れた名車マセラティ「ボーラ」が1700万円弱! いまならまだ夢じゃない

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2022 Courtesy of RM Auctions

アメリカ仕様のボーラは、なかなかリーズナブル?

このほど“AMELIA ISLAND”オークションに出品されたボーラは、4.9リッターエンジンを搭載した275台(ほかに250台説もあり)のうちの1台。1973年10月3日にモデナのマセラティ工場で完成し、その後カリフォルニア州ロサンゼルスにあるマセラティの西海岸地区正規代理店“マセラティ・オートモビル”社に新車として納車された。

添付されるビルドインフォメーション(生産記録)によると、このクルマは新車として作られた時のカラーコンビネーションである“ジャッロ(黄色)”のボディペイントに、贅沢にトリミングされたブラックのコノリーレザーによるコックピットが、双方ともに正しく残されていることがわかる。

現在このボーラ4.9には、カンパニョーロ製の純正アロイ・ホイール(アロイ製センターキャップは取り外し可能)と指定サイズのピレリ“P4000”タイヤが装着されている。

1973年後半に製造されたこのボーラは、当時アメリカ国内で製作された、のちの“5マイルバンパー”に比べるとスリムながら、本国仕様よりは厳めしいクロームバンパーと、純正指定されていたヴィタローニ社製“カリフォルニア”ミラーを運転席側に装備している。室内にはイタリア車の定番ヴェリア・ボレッティ社製のメーターに加えて、1970-80年代にアメリカで流行していた“パスポート・レーダーシステム”も装備されている。

2013年には、オクラホマ州オクラホマシティの“サンチアゴ・スポーツ&クラシックス”社のスペシャリストが、このマセラティのメカニズム系とコスメティックのレストアを320時間以上かけて行っている。添付ファイルの作業概要が示しているように、サスペンションやドライブトレイン、複雑で高度な油圧システムには特に注意が払われたようだ。

昨今、ランボルギーニやフェラーリの70sクラシック・スーパーカーが軒並み高騰しているのに対して、マセラティ・ボーラは派手なアイコン的要素がいささか劣ることから、比較的穏当なマーケット市況にある。それでも、著名なデザイナーによるコーチワークと技術的進歩を体現した、目の肥えた愛好家にとっては貴重なモデルともいえるだろう。

昨2022年1月の“ARIZONA”では、同じく北米仕様でより大きな5マイルバンパーを持つボーラが26万8800 USドル、日本円に換算すると約3100万円で落札される事例もあったようだが、そちらは走行距離が1300km足らずで、新車時代の保護ビニールさえ残る超絶オリジナルコンディション。ある意味、奇跡的な個体だった。そのいっぽうで、今回のオークション出品車両は充分な修復とサービスを享受しているとはいえ、時と走行距離を順当に重ねた個体であるのは間違いない。

それらの要素が不利に働いてしまったのだろうか、競売では12万6000ドル(邦貨換算約1680万円)という、比較的なリーズナブルな価格で落札されることになったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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