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フェラーリ「F40」でル・マンに参戦した記憶が蘇る! 70代クルマ馬鹿オヤジの「オートモビルカウンシル」放浪記

オートモビルカウンシル2023に展示されたフェラーリF40

クルマ趣味の華やかりし時代を再体験できるタイムトンネル

2023年で8回目の開催となる「AUTOMOBILE COUNCIL 2023(オートモビルカウンシル)」が、4月14日から16日までの3日間、千葉県・幕張メッセで開催。「Classic Meets Modern and Future」をテーマに、古今東西のヘリテージカーから最新EVまで展開されたイベントを、モーター&マリン・ジャーナリストの山崎憲治氏がレポートします。日本カー・オブ・ザ・イヤーの評議委員も務める大ベテランの目に、会場はどう映ったのでしょうか。

今年のテーマは「ポルシェ911の60周年」と「フェラーリ・スペチャーレ」

春を迎える喜びのひとつ、いや、うきうきわくわくの青春時代を思い出させるイベントがこのオートモビルカウンシルだ。最初に展示会場を上から俯瞰する。このときすでに冷静さは失われている。お目当てのクルマを見つけ出し、大まかに見学ルートを決めるものの、まあそんなものは展示会場に降りた瞬間に無意味となる、タイムトンネルだ。

ポルシェ911の60周年企画「初期ナローからカレラGTまで」には、4台の911が並んでいる。初代ナロー911、カレラRS2.7、959、カレラGT。歴史が重連していく。さらりと見て、いま最もホットな911GT3 RSに目がいく。ドラッグリダクションリアウイング……レーストラックで乗ってみたいと、あらぬ衝動。EVのタイカン・ターボのルーフにテント? クロスツーリスモという名のクロスオーバーモデルのようだ。

あらら……と斜め見しながら赤いクルマたちに引かれていくと、あ、1927年のアルヴィスがいる。ストレートエイトのGPマシン、それもFWDだ! ああ、アストンマーティンDB6ヴォランテがいる……美しい……清廉なしつらえ。

よみがえるエンツォ・フェラーリとF40への想い

さあさあ赤いクルマたちに。エンツォ・フェラーリ生誕125周年企画「フェラーリ・スペチャーレ」だ。フェラーリ288GTOはF40登場前夜、大いなる変化の兆しを潜ませたグループBスペチャーレで、ミケロットの288エボルツィオーネを介して1987年F40へとつながった。そのF40がいる。エンツォ存命中の最後のスペチャーレである。

筆者は1984年暮れ、モデナ、フィオラノでエンツォ・フェラーリの執務室に入った経験がある。5分だけの許可。先ほどまでいたその机の上には日記、老眼鏡、紫のペン。背後の壁にタルガフローリオの絵、息子アルフレード「ディーノ」の写真……。本人に会いたかったがそれは叶わなかった。

F40への想い。1995年、96年とイタリアのエネアレーシングチームとのジョイントでル・マン24時間レースにTipoチームの監督として参加したF40 GTE。製作はパドバのミケロット、ルイジ・リンドウ技師、元気かな……。モンツァでのシェイクダウン、ル・マン本戦、さらにBPRGT選手権でシルバーストーン、夏は鈴鹿1000kmと、レーシングF40 GTEと付き合った。ふつふつとあれこれ思い出が湧いてくる。あのゼッケン59のF40 GTEは、いまはコレクターの手にあるという。

ほかにも並ぶフェラーリ、F50、エンツォ、J50。750モンツァをオマージュしたモンツァSP1に目が留まる。シングルシーター、いいな。見せびらかしに銀座を、いやモナコ、ホテルドパリ前を走りたいという夢、妄想が広がる。

大人の色気を教えてくれたシトロエンSMなど名車の数々

フェラーリの殿堂を離れてみると、貴重なランチアがいる。デルタS4ストラダーレ、グループBの終焉を呼び起こしたなあ。ミラノの新興メーカーAMOSの復刻版デルタ・インテグラーレ・フトゥリスタを見ていると、なぜか、デルタ以前、トリノのコルソ・マルケ38番地、アバルトで会ったジョルジュ・ピアンタのワークス037ラリーに思いが飛んだ。

だが、眼前のフランス車に気を移そう。シトロエン、かつて1975年CX2200パラス4MTと78年2400パラスCマチックと乗り継いだ筆者にとって、憧れのままの「シトロエン・マセラティ」SMがいる。レナウン・ダーバンのTVコマーシャルでアラン・ドロンが乗ったSM。イエローバルブ、霧の峠道……。大人の色気、なり切れっこない憧れ……。自分のシトロエンライフはBXで途絶えたなと振り返る。

あら、さすがのアルファ ロメオ。1961年ジュリエッタスパイダー1.3L、63年ジュリアスパイダー1.6Lが並ぶ。いい値がついているなあ……。おお、BMW 2002ターボは2000万円超え……。

トライアンフTR6で夜のLAを走りまくった記憶

わあ、1970年トライアンフTR6だ。若きクルマ雑誌編集者だった頃、給料を前借りして購入した中古TR4に2年乗り、追突事故の後、スピットファイア1.5に乗り換えた。その後は雑誌撮影で借り出したルーカス製インジェクションのTR5に心は動いていたが、手に入らず、LA取材時に現地の友人から借りたTR6に惑う自分がいた。日暮れに迷い込んだダウンタウン、危ない街、思いっきり逃げた。夜のLAを走りまくった記憶、ブリティッシュグリーンのTR6に魅かれていく。カルマンの手になるフェイスリフトを受けて、ミケロッティの寄り目はすでにない。アメリカ仕様、ゼニス・ストロンバーグキャブ。ふと触手が動くが……548万円。そのとき、白いTR4が目に入る。全輪独立懸架のTR4Aで、650万円。ともにせめてその半額ならなあ。

現在にまで連なるスポーツカーの歴史を体感

ヒストリックカーの値上がりはもう落ち着くことはないだろう。RMサザビーズで何億のフェラーリも、8000万円超のアストンマーティンDB6も煌めいてそこにいる。SR311フェアレディ、750万か。Z432、スカイラインGT-R-KPGC10、トヨタS800……もう価格は見ない。

カローラレビン、セリカXX、あ、オースチンヒーレー100/4、コンペティション仕様の100Sか。エンジンフードのルーバー、フロントウインドウはスポーツスクリーンに。ピラーの角度が変えられてスクリーンの傾斜角度を変えられるオリジナルもいいな。

おー、ロータス47。ピュア・ロータス・ヨーロッパ・レーシング、夢はワインディングを駆け巡る。

ホンダ・スポーツ360のコーナーではリボーンさせたスポーツ360が誇らしげに展示されている。その搭載エンジン、直列4気筒DOHC 354cc 30ps/8500rpmを引き継いだT360トラックも展示。ホンダスポーツの歴史の源流、歴史を体感する。

ロータリー伝道師のマツダコーナーでは、MX81がひそかに隅に。1981年ベルトーネの仕掛けたコンセプトカー、先鋭的だったな。フォルムはシトロエンBX、XMに通じる。ガンディーニ、デュシャンの面影が残る。インテリアに未来が内包されていた。で、今は。

思わず立ち止まる。シェブロンB16フォードBDG、シュパンポルシェ・ロスマンズ962LM、ガルフ917Kレプリカ、芳しい時代のレーシングカーが並ぶ。ひと息入れよう。あ、マセラティ・ミストラルスパイダー3500が。

誇り高きガソリン車たちの歴史にふたたび命を

内燃機の遊園地にいる。時代が走馬灯のように回っている。AIMやBYDといったEVは、なぜか視界からスルーしている。未来はBEV、NEV一色の時代になるのだろうな。ガソリン車時代の王者、キングたちも望郷の彼方か……。

煌めいていた夏の終わりのビーチサイドにいるようなわびしさに取り込まれている。内燃機エンジンのもたらした高揚、カムに乗るエンジンノート、エキゾーストサウンド、排気ガスの香り。さまざまなストーリー、レーストラックでの勇姿、グラベルでの雄姿、歴史に刻まれた誇り。煌めく夏のあの太陽に照らされて火傷していたあの麗しの時代。歴史追認ではなく、そのときどこで何をし、感じていたのかがよみがえるオートモビルカウンシルの逍遥。さあどこを彷徨うか……。

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