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「クルマ、用意するから」「えっマジすか!?」フィアット500との生活は突然始まりました【週刊チンクエチェントVol.2】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: 嶋田智之/Stellantis N.V.

いろいろな選択肢がある中で、ノーマルの500を選んだワケとは

そんなわけだから、その時点で販売できる準備が終わってる状態のクルマは何台かあったし、日本に来ることになってるクルマはさらに何十台もあって、それで“どれがいい?”だったわけだ。

あまりの展開にポカ〜ンとなったまま、僕はこんなふうに答えたことをうっすら記憶してる。

「いや、あの……特にこれっていうのはないんですけど、歴史的な価値がより強いモデルよりは普通のモデルが……。エンジンはロッピャクやロッピャクゴジューじゃなくて、ノーマルのゴヒャクがいいです。遅いから」

それは咄嗟に出てきた返事だったのだけど、今から思えばこうしてレポートしていく前提でモノゴトを考えてたのかもしれない。皆が手に入れやすいモデルの方が何かの参考にしてもらえる可能性が少し高そうだし、フィアット500の最も標準的といえる499.5ccエンジンの限られすぎてるパフォーマンスであちこち走りまわる方が最も標準的といえる出来事につながって何かを生み出してくれるだろう、と無意識に考察を巡らせてたのだ。たぶん。きっと。

それにしても、何たる僥倖。東京に戻ってからも、チンクエチェントのことが頭から離れない。ふとしたハズミに“あんなことしよう”、“こんなのはどうだ?”なんてことに想いを馳せていたことに気づいたりする。あるいは“保管場所はどうしよう?”、“うちの近くは月極の屋根付き駐車場ってほとんどないし、あっても4〜5万からだしなぁ”と、ちょっとばかり気の早いことを考えてたり。

そんなこんなで1週間だったか10日だったかが過ぎた頃、伊藤さんがメールをくださった。そこにはこんなふうに記されていた。

「この2台のうちのどっちかにしようと思うんだけど、どうでしょう?」

同じフィアット500L。同じターコイズブルー。違うのはインテリアのカラーで、ひとつはレッド、ひとつはブラウン。

「2月に日本に入ってくるから、実車を見て決めてもらってもいいかな、と思ってます。嶋ちゃんには白とかよりこっちの色の方が似合うと思うんだよね」

ああ、これは何が何でも都合をつけて、通関が切れる日にクルマを見に行かなくちゃ! 気分がやたらと盛り上がってきた。

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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