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ハンドドライブメインのレーシングスクールが今季も開催! 参加者にサーキット走行後の感想を聞いてきました

同乗走行には多くの希望もあり、愛車を持ち込んで自身で走行する数よりも、同乗走行のほうが上回る人気に

車いすドライバーが学ぶべき要素とは?

車いすドライバーの青木拓磨選手が理事長を務める一般社団法人国際スポーツアビリティ協会。同協会の主催によるHDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)の2023年最初のスクールが、2023年5月10日に千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイにて開催された。

障がいを持っていてもサーキット走行を楽しめる

青木選手といえば、国内での活躍後、世界最高峰となる2輪ロードレース世界選手権(WGP)に1997年から参戦を開始。翌シーズン開幕直前に行った走行テストでの事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされてしまう。その後は4輪に転向し、さまざまなカテゴリーに積極的に参戦を続けているドライバーである。

このスクールは、市販車はもちろんLMP2(ル・マン プロトタイプ2)マシンに乗ってル・マン24時間レースも戦ってきた青木選手自身の4輪レース活動の経験を参加者へフィードバック。具体的にマン・ツー・マンで指導していくという貴重な機会となる。そもそもモータースポーツは、自身の身体能力の先にデバイスがあり、健常者・障がい者が分け隔てなく楽しめるスポーツである。ということから、障がいを持っていてもサーキット走行を楽しんでいこうという趣旨のもと開催されており、障がい者はもちろん健常者も、ともに受講できるスクール(障がい者については75%オフという破格の受講料!)となっている。

レーシングスクールという名がついているが、それ以前に、ハンドドライブでクルマを運転する人のドライビングテクニックの講習という点にも注力した内容となっている。というのも、脊椎損傷などにより半身不随のような障がいであると、体幹が弱く足で踏ん張ることもできないことから自らの姿勢を支えられないことも多い。その状態で横Gの発生するクルマを運転すると、自らの着座姿勢を保持することすら難しくなるという。

そういったことを踏まえ、クルマの挙動に対して、自身の姿勢を保持できるようきちんとシートに身体を固定して正しい乗車姿勢を取ることを学ぶ。さらに、旋回操作と加減速の操作を上腕2本で行わなければならないハンドドライブでは、その装置によっては常に片手操作という状況もあるため、ハンドルやシートの位置、シートベルト、そして正しい車両の操作についても実地で指導してもらえる。

スクール自体は、45分間のスラローム教習の後、1回20分の休憩を挟み3回のサーキット走行が設定されている。アクティブクラッチやグイドシンプレックスなどの手動装置を搭載した、日産「マーチ」やホンダ「N-ONE」といったHDRSのハンドドライブ車両も用意されるが、障がい者の多くは自身のクルマを持ち込んでいる。

また青木選手の横に同乗してコースを体験できるイベント(2000円/人)もあり、障がいがあるからサーキットは無理、ではなく、障がいの有無にかかわらずサーキットも楽しみたい、というマインドチェンジにも貢献している。

身近にサーキットを楽しめる機会

今回久しぶりに参加となった高橋 修さんは、HDRS開催当初から参加しているメンバーのひとり。今回は車両を乗り換えたこともあって練習をしたいと久しぶりの参加となった。ちなみに高橋さんは2011年にバイク事故で脊椎損傷(Th4)を負い、下半身の完全麻痺となっている。

「(HDRSは)身近にサーキットを楽しめる機会だと思っています。今回は車両を乗り換えたことで参加したのですが、もともと自分の手には負えないクルマだということは知っていたものの、実際にこうやって走ってみて、より手に負えないクルマだということがよくわかりました。久しぶりのサーキットだったこともありますが、すごく疲れましたね」

サーキット未経験でも楽しめた

まだ若干20歳という芹澤 輝さんはこのHDRS初参加。2022年3月、スキーのジャンプでの事故で腰椎(Th12)の損傷で不全麻痺だという。下肢の感覚はまだらにあって、左足は動かすことが可能だという。事故後はチェアスキーや車いすテニスを楽しんでいる。もともとクルマにも興味があったということで、このHDRSを見つけて参加したという。なお、サーキットは全くの未経験であった。

走行後には「タイヤの空気圧のチェックもしないで走り出してしまいました。タイヤ大丈夫ですかね?」と気にしつつも「すごく楽しかった」とコメントしてくれた。

今回助っ人講師としてHDRSに初めて参加した中島佑弥選手は次のようにコメント。

「サーキットでの講習というのはこれまでも経験がありますが、ハンドドライブというのは初めての体験でした。今まで触れたことのないものに触れることができて楽しかったです。足を使わないでクルマを操作するというと、レースシミュレーターのグランツーリスモをコントローラーで操作するようなものかと思いますが、自分はそっちのほうも不得手でして……。センスがないなと常々思っているので、上腕だけで器用にクルマを操作している皆さんを見ることができて、素直に尊敬しちゃいます。

レーシングスクールのほうは、クルマをしっかり動かしてしっかり止めるということができるようになったと思います。皆さん運転が上手になれば、万が一の事故に遭いそうな場合でもそれを回避できることにつながるかもしれません。これからも楽しみながら運転のスキルを上げていってもらえたらと思います」

最後に青木選手も「今日はそれぞれのクルマの限界を感じることができたと思います。今日学んだのは、非日常体験です。帰りの走行は、サーキットとは異なる一般公道ですので、十分気をつけて帰ってください」と締めくくった。HDRS、次回は2023年7月26日(水)に、今回と同じ千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイで開催となる。

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