サーキットで大型バイクの走りを堪能
2023年5月11日(木)、千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイで、一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)が主催するパラモトライダー体験走行会が開催された。パラモトライダーと呼ぶ通り、障がいを持った方を対象にしたバイクの体験走行会で、その楽しさを広く体験してもらおうというのがその趣旨となる。バイクの事故で障がいを持ってしまった方だけでなく、今までバイクというものに触れたことのない方も対象として開催している。
障がいに合わせてバイクをカスタマイズ
この走行会を主催するSSPは、現在オートレーサーとして活躍している青木治親選手が立ち上げた団体だ。1990年代から2000年代にかけて、国内外で活躍した伝説のレーサー青木三兄弟の末弟で、WGP GP125クラスで2度の世界チャンピオンを獲得しているレジェンドライダーである。
実兄の次男・拓磨選手はGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされている。その拓磨選手を再びバイクに乗せることを目的に、ハンドシフトユニットをバイクに取り付け、周りが支えることでバイクに乗れるようにと企画した「Takuma Ride Again」が2019年に無事に成功。それをきっかけにこの感動をもっと多くの人に、とスタートした。
パラモトライダー体験走行会には、通常左足で操作するギアチェンジを手元で行なえるようにしたハンドドライブユニットを取り付けるなど、それぞれの障がいに合わせてバイクをカスタマイズ。発進と停止というバイクが不安定になるタイミングにサポートスタッフがバイクを支えることで、ライディングを可能としている。
ボランティアスタッフのおかげでスムーズに進行
パラモトライダー体験走行会を初回からサポートしている千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された。今回は過去に参加したことのある経験者を対象にし、サーキットでの大型バイク走行をメインとした体験会となった。その参加者は6名。多くのボランティアスタッフも参加し、パラモトライダーたちの走りを見守った。
体験走行会は、まず事前に参加者たちそれぞれの身体の様子を確認したうえで、当日もSSP専属の理学療法士である時吉直祐氏が参加者の問診を行ってその日の体調をチェックし、参加の可否を決定する。その後はそれぞれの障がいについてボランティアスタッフに注意事項を伝え、これを慎重にサポートをしていくことになる。
パラモトライダーの走行をアシストするボランティアスタッフは、経験者を中心にグループ分け。それぞれでサポート内容を把握したうえで、自らも怪我などのないように配慮しながら、パラモトライダーの移乗をサポートする。パラモトライダーが乗るバイクを押したり、受け止めたり、それぞれがテキパキとこなしていく。ちなみに、このSSPの活動では、ボランティア活動証明書が発行されるなど、ボランティアスタッフにとってもやりがいのあるイベントになっているのだ。
パラモトライダーが一般公道を走るチャンスが再びやってくる
開催場所はもちろん、体験会に使用するバイクもSSPが用意する。しかもそれだけではなく、この体験会に参加する障がい者には、ヘルメットやグローブ、ブーツ、革ツナギまですべてを貸し出し、各参加者の安全装備にもしっかり配慮している。
この日は、参加者全員がバイク乗車の経験者であるため、アウトリガー付きの小型バイクで簡単にライディングレベルの確認を済ませ、大型車両によるサーキットでの周回走行にステップアップしていった。今回も各企業から提供された、MVアグスタ ストラダーレ800、BMW F750 GS、KTM 1290スーパーデュークを使用し、先導付きで走行を楽しんだ。
今回の体験走行会では高速走行が主体となったこともあり、各参加者が思う存分堪能するだけの時間が用意され、走行後は以前にも増して笑顔が見られた。また、この場では再びアネスト岩田ターンパイク箱根での占有走行を行うことが発表され、開催日となる9月10日(日)に向け、各ボランティアスタッフにも参加のお願いをすることになった。
障がいを負ったうえに、2輪免許を失ってしまったパラモトライダーが一般公道を走るチャンスが再びやってくる。SSPでは2度目の公道走行に向けて、これからも積極的に活動を行っていくとしている。