スタイリッシュな道具っぽさは欧州コンパクトカーさえ凌ぐ存在感
ところでそんなワゴンRの人気の秘訣は、いったいどこにあったのだろうか? 初代が打ち立てたワゴンRの世界観でいえば、軽らしく手頃で実用的でありながら、スマートな道具感が新鮮だったからだと思う。そういえば当時、輸入車や国産上級車を持つようなユーザーが普段使いに初代ワゴンRを積極的に選ぶ……といった話もあった。ロールス・ロイスのオーナーがミニにも好んで乗ったのと同じように。
初代ワゴンRに最初に試乗した時の印象は今でも鮮明だ。当時は今のように全高1800mm級のスーパーハイト系のモデルはまだなかったから、そもそも初代ワゴンRの全高1680mmは十分に目新しかった。そのうえでドアを開けてドライバーズシートに座ってみると、625mm(FF車)という、当時としてはやや高めのヒップポイントが新鮮だった。高めといってもキャブオーバー型の1BOXのようなトラック然としたものではなく、少し床が上げられていたものの、膝を曲げ足を上からしっかりと床に置き、背筋を伸ばしたアップライトなポジション。見晴らしがいいだけでなく、立った姿勢からサッと乗り込める自然な動線も魅力に感じられた。
また後席の背もたれをパタン! と前倒しするだけでフルフラットなスペースになるラゲッジルーム、通称「バケツ」と呼ばれた助手席クッション下の収納、全高の高さゆえゆったりと大きく開くバックドアなど、シンプルな構造で使い勝手も上々。「シンプルだが機能的」と昔ながらの自動車雑誌のキャプションの王道をいくようなインパネのデザイン、ヘリンボーン柄のシート表皮、それとトロン! と尖ったところのない乗り味などなど……。
何もかもが新鮮で、さり気なくスタイリッシュな道具感が味わえ、軽自動車らしからぬ満足感の高さにすっかり夢中にさせられたものだった。国産リッターカークラスはもとより欧州コンパクトカーさえ凌ぐ存在感だった。
6代目まで「ワゴンRらしさ」をずっと貫いてきた
なお今回の記事用に、現行まで6世代のワゴンRのカタログから歴代モデルの姿も画像ギャラリーでご紹介しているが、途中、軽新規格化(2代目)、プラットフォームの一新(3代目)、新パッケージの採用(4代目)などを経ている。だが、改めて俯瞰で眺めると、どの世代もひと目でワゴンRだと判るクルマになっている。
モデルが長いと変貌を遂げるクルマも少なくないなか、この一貫性は貴重だと思う。なお歴代モデルはおおむね5年程度で世代を新しくしており、現行モデルは2017年2月の登場だからすでに+1年の6年目に入った。次の7代目でも世界観が貫かれてくるのかどうかは、今現在まだ見えてこないが……。