カッコよくて高性能なら「スーパーカー」と見なされた?
1970年代中ごろ、子どもたちの周りにあるさまざまなモノがクルマ関連グッズと化した空前絶後の「スーパーカーブーム」。当時の子どもたちを熱狂させた名車の数々を振り返るとともに、今もし買うならいくらなのか? 最近のオークション相場をチェック。今回はいわゆるスーパーカーではないものの、70年代の子どもたちから熱狂的な人気を集めたBMW「2002ターボ」、通称「マルニターボ」です。
箱型の乗用車だったがスーパーカーブーム期にアイドル扱い
いま思うと不思議な話だが、スーパーカーブーム全盛時は「スーパーカーというクルマ」の定義が曖昧だった。ウェッジシェイプではないクルマのほか、F1マシンやシルエットフォーミュラまでもがもてはやされた。
オイルショックの影響でいったん下火となったモータースポーツが1970年代中盤にかけて再興し、そのことをきっかけとして漫画『サーキットの狼』が誕生。「狼人気」によってスーパーカーブームが巻き起こったので、興隆のルーツがモータースポーツにあったと解釈され、F1マシンやシルエットフォーミュラが注目されたのは当然の流れだったが、ウェッジシェイプではないクルマたちまで脚光を浴びた理由は謎だった。
いまだにその理由はよく分かっていないが、往時は、あるクルマを見て、子どもたちが「カッコイイ!」と思い、それが高性能車であればスーパーカーとして語られた……といった感じだったので、いかにも乗用車然としたBMW「2002ターボ」もアイドルとして扱われた。
世界初のターボチャージャー搭載市販車として1973年デビュー
1968年に発表された「2002」シリーズは、いまでも「マルニ」の愛称で親しまれている。軽量かつコンパクトなボディにパワフルなエンジンを搭載している点が魅力だ。参考までに2002ターボが登場するまでの話をすると、1990cc直4 SHOCエンジンに1基のソレックス製キャブレターを装備していた2002(素のグレード)、ツインキャブレター仕様の2002ti、クーゲルフィッシャー製メカニカルフューエルインジェクションを採用し1971年に登場した2002tiiというグレードが存在した。
インジェクションシステムの採用により、パワーとトルクを一段とアップすることが可能となったが、この進化がターボモデルの誕生へとつながっていった。最強のマルニこと2002ターボがデビューしたのは1973年のことで、航空機エンジンの分野でターボチャージャーに関するノウハウを有していたBMWが、その技術を世界で初めて量産車に転用したのだ。
圧縮比を低めた2002tii用の水冷直列4気筒SOHCエンジンにメカニカルフューエルインジェクションとKKK製ターボチャージャーを組み合わせることで2002ターボは170psという最高出力を発生。シチュエーションを問うことなく、圧倒的な速さを披露できた。増加したパワーに対処するため、前後トレッドやラジエター容量の拡大、オイルクーラーの装備、ギア比のクロスレシオ化およびファイナルの変更、足まわりやブレーキの強化などが実施されていた。
最高速度211km/h、0-400m加速15.3秒という、2Lクラスのサルーンとしては世界最高峰に位置するポテンシャルの高さを誇り、そのようなスペックを有していたことから、スーパーカーブーム全盛時に子どもたちから大いに注目されたわけである。