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ドイツの完全EV化は当分先!? 時速200キロオーバーが当たり前の国ではまだ内燃機関を味わいたいです【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: BMW/メルセデス・ベンツ/ポルシェ/AMW編集部

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ドイツに住んで見えてきた現状とは

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ドイツのEV事情」です。ドイツは2035年までにすべての新車を電動車にすると発表していますが、現地にも拠点を構えている木下さんは、ハイブリッドなどは増えても完全なEV社会になるのはまだまだ先だろうと感じています。その理由とは?

環境対策を推し進めているが……

ニュルブルクリンクを極めるために、ドイツと日本の二重生活をしています。なので、これまでよりもやや深くドイツのクルマ社会を知る機会を得ているわけなのですが、意外なことに……と言いますか、予想通りと言いますか、ドイツがEV社会になるのはまだ先のような気がしますね。

ドイツ政府は2035年には販売されるすべてのクルマを電動車にすると宣言しました。いかにも地球の環境に敏感なドイツらしい施策です。東京電力の放射能汚染に端を発し、素早く脱原発に舵を切ったのもドイツですし、再生可能エネルギーの確保にも前向きです。

風力発電

ドイツを走っていると、風力発電のための巨大な風車が雨後の筍のように次々にそびえ立っていることがわかります。頻繁にドイツとの往復をしていますが、次々と景色が変わっていくために、道を迷ってしまうことも少なくありません。

ただし、2035年のEV化には、さすがのドイツも前言撤回の機運がありますね。期限を先延ばしするとの報道もあります。

ドイツの高速社会ではEVの電費が厳しい!?

日本から想像するとドイツはEV先進国のように思えます。メルセデスもBMWも、次々に高性能なEVモデルを発表しています。あのスポーツカーメーカーであるポルシェですら、EVスポーツをリリースしているのですから、ドイツのEV化は進んでいるように錯覚するのも道理です。

ですが、社会はそんなに急速には変われません。ドイツでもテスラやヒョンデ「アイオニック5」といったEVを見かけることはなくはないのですが、やはり少数派です。僕が借りているアパートのあるニュルブルク村はかなりの田舎ですから、急速充電器設備などわずかにあるだけ。速度無制限のアウトバーンで300kWのハイパワー充電器をひとつ見かけた程度です。

そもそもドイツは高速化社会です。アウトバーンの追越車線はおよそ200km/h前後で流れています。そんな高速でEVが巡航したら、電費は驚くほどの数字になってしまいます。下道でも場所によっては100km/h以上の速度で流れています。いくら大容量のバッテリーを搭載していても、頻繁に充電ストップを強いられますよね。先を急ぐドイツ人が、のんびりと充電するとは思えないのです。

* * *

そもそも、ドイツ人は走りが好きです。旧車を愛する人も少なくない。内燃機関にも深い愛情があります。そんなドイツ人が大好きな内燃機関を簡単に手放すとは思えないんですよね。

しばらく、EV先進国ドイツの動向に目が離せません。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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