4シリーズベースのB4/D4グランクーペに国内で公道試乗
アルピナの日本総代理店であるニコル・オートモビルズは2022年3月30日、高性能4ドアクーペ「BMWアルピナB4グランクーペ」と「D4Sグランクーペ」の日本導入を発表した。ついに日本の公道でパフォーマンスを試す機会に恵まれ、モータージャーナリストの西川 淳氏が両モデルを試乗。「3シリーズ」ベースの「B3」および「D3S」との違いも含めて、レポートをお届けする。
異なるベースモデルのキャラクターをアルピナはどう料理したのか
結果的に言うと、B3とD3Sがマイナーチェンジする前にB4グランクーペとD4Sグランクーペに乗ってみて、気に入ったのはD4Sグランクーペの方だった。前期型B3の乗り味にも近いと思ったからだ。そもそもそれが「困惑」の始まりだったのかもしれない。
BMWの「4シリーズ」が登場したのは2016年のことだった。クーペモデルを偶数で呼ぶのは「6シリーズ」や「8シリーズ」の伝統に沿うもの。ではなぜ3シリーズにクーペがあったかというと、「マルニ」時代から続く2ドアサルーンという位置付けで、スタイルも性能もセダンにわりと近いものだったからだ。
対して6や8は5や7とは全く違う。イメージの共通性がどこにもない。要するに4シリーズは3シリーズクーペの単なる名称変更ではなかった。最新の4シリーズを見ればそれは明らか。シルエットはもはや3シリーズよりも8シリーズに似ているではないか。もちろんパフォーマンスもずっとスポーツ寄りだ。
となるとアルピナモデルも3シリーズベースと4シリーズベースとではキャラクターの異なることは容易に想像がつく。ちなみに4シリーズベースのアルピナは4ドアのグランクーペのみ。BMW Mがクーペとカブリオレ、アルピナがグランクーペと棲み分けた。セダンやツーリングよりもマーケットが小さいことへの配慮かもしれない。
グランドツーリングカーとしてはセグメント最強レベル
B4グランクーペを先に試した。その乗り味はM440iの延長線上にあって、よりスポーツカー的なテイストだ。走り始めるとまずはフロントアクスルの踏ん張り感に驚く。前アシはアルピナの専用チューニングとなっていてとにかく存在感たっぷり。ハンドルとのダイレクトにつながっている感覚もあって余計に前輪の存在を強く意識する。ライドコンフォートは硬めながら、キャッチャーミットに収まる豪球のごとくビシッと収めるから辛くはない。総じてB8グランクーペに似たドライブフィールだった。
M謹製のS58エンジンは相変わらず素晴らしい。普通に走らせている分には柔軟で扱いやすいエンジンでありながら、ひとたびムチ打てば高回転域までストレスなく回り、快感が右足裏から脚、身体を通過して脳へと届く。峠道に入れば、さっきまでの存在感たっぷりな前輪が頼もしく自在に動く。高速道路でも「道をよく知っている」走り方=ドライバーの小さな意識に順応して走る、を見せた。じつにアルピナらしい走りというべきだ。