850CSiの製造台数はわずか1510台
2023年2月1日、RMサザビーズがパリで開催したオークションにおいてBMW「850CSi」が出品された。BMWのフラッグシップモデルとして1990年デビュー。1994年には「CSi」を追加し、1510台が世に送り込まれた。はたして同車はいま、いくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
M1を彷彿とさせるシャープなノーズとリトラクタブルヘッドライト
グランクーペもラインナップされることから、日本では「7シリーズ」よりも売れるという現行「8シリーズ」。流麗なクーペとしての美しさと機能は内外装に表れており、オーナー・ドライバーであればショーファー感がある7よりも8になるのだろう。
そんな8シリーズの初代であるE31型8シリーズは、「6シリーズ」(E24型)の実質的な後継モデルとして1989年登場(日本では1990年)。7シリーズのライバルはメルセデス・ベンツの「Sクラス」だが、8シリーズのライバルとなるはずのメルセデス・ベンツ「SL」は当時2座オープンだったので、屋根は開かないが4人乗れる8シリーズはラクジュアリ―クーペとしてバブル期の日本でも人気車となった。
その理由は「M1」を彷彿とさせるシャープなノーズとリトラクタブルヘッドライトが印象的なこと。直線と曲面が組み合わされつつシャープなスタイリングであり、動力性能はGTとしてもスポーツとしても魅力的である。インテリアもBMW流のドライバー優先の仕立てなので、フォーマルではなくてパーソナルなプレミアム感が満載。
それでいてエンジンはなんとV8とV12のみというから7シリーズよりも上のモデルとして羨望の1台となっていた。当時は850iや840Ciが、大物芸能人やプロスポーツ選手の愛車としても話題になったものだ。
2022年にフルレストア済みの850CSi
8シリーズの最上級仕様である850CSiは、決して小さなクルマではないが、375psを発揮する5.6LのV12エンジン+6速MTの組み合わせであり、電子制御スロットルを採用したBMW最初のモデルでもある。そのため大柄で重くて燃費が良いとは言えなかったが、鍛造のクランクシャフトに代表されるように各部へチューニングが施されて、BMWのフラッグシップらしい走行性能を持っていた。しかし販売の主力は当然V8モデルであり、V12を搭載した850CSiの製造台数はわずか1510台にとどまるという。
1995年の2月17日に製造されたことが確認されているこの個体は、長年にわたってスウェーデンで暮らしたことが明らかで、メタリックのカリプソレッドのカラーにブラックの本革内装を持つモデル。サンルーフや電動調整のランバーサポートやヒーター付きのシートもあり、ステアリングはMのレザータイプとなるが、かなりラグジュアリーな感じを受ける。加えて当時のツールキットや説明書も保存されている。
2022年にフルレストアされたというが、走行距離は8万4000kmオーバー。今回のオークションでは、残念ながら落札ならず。RMサザビーズでは、現在でも850CSiを販売中している。一体いくらで販売されるのだろうか……。