フルレストアに近い作業が行われていたターコイズブルー号
名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートをする「週刊チンクエチェント」。第3回は「赤内装は嶋田さんっぽいんだよね」をお届けする。
新車としてデリバリーされたときから変わっていない組み合わせ
それから数日して、僕はチンクエチェント博物館の館長、深津浩之さんと電話で話していた。いったい用件が何だったのかはまったく覚えてないのだが、深津さんとは軽く20年を越えるおつきあい。仕事で御一緒させていただいてるのもたしかなのだけど、むしろ気心知れた昔からの仲間という感じだ。たまに電話で話すと用件よりも雑談の方が圧倒的に多くて、何のために電話したのか忘れちゃうこともあるくらい。そういう仲間、皆さんにもいるでしょう?
そんな雑談の中、深津さんは唐突にこんなことを言いだした。
深津さん「そういえば嶋田さんに乗ってもらうチンクエチェント、僕は個人的には赤内装の方がいいと思いますよ。だって、嶋田さんっぽいじゃないですか(笑)」
嶋田「……っぽい? ってどういうことっすか(笑)。俺は性格がわりと地味なんですから。ウソですけど。いや、でも根が暗いのはホントです。ってそんなことはどーでもよくて、じつは俺も赤内装の方が、紙でもWebでも映えるかな、なんて思ってたんですよ。ターコイズブルーに赤いインテリアとか、そんな組み合わせイタリア人しかやらないでしょ。ブラウン内装の方が全体的なまとまりはいいと思うし、オトナっぽい感じがいいなって思うけど、チョイスできるなら、赤かなぁ……」
ここがひとつのターニングポイントだった。
深津さん「両方とも販売車両として博物館のホームページに出してるから、欲しいっていう人が現れるかもしれないですけど、いっぺんに両方が売れちゃうことなんてないと思うし、売れるとしたらブラウンの方が先だとも思うんですよね。その組み合わせ、好きな人が多いじゃないですか?」
それ以前から博物館のウェブサイトにはストックリストができていて、販売できる車両のほとんどが、どんな作業を受けているのかを写真から知ることができるようになっていた。そのあたりはまたあらためてちゃんとご紹介しようと考えてるのだけど、ともあれ僕のところにあるクルマは博物館が手がけた11番目の車両で、その時点では作業前の写真しか掲載されていなかった。ブラウンの方もほぼ同様だった。どちらもボディカラー、インテリアカラーともに元のまま、おそらく組み合わせそのものは新車としてデリバリーされたときから変わっていないのだろう。