ポルシェ初のターボ搭載車として華々しく登場
1970年代中ごろ、子どもたちの周りにあるさまざまなモノがクルマ関連グッズと化した空前絶後の「スーパーカーブーム」。当時の子どもたちを熱狂させた名車の数々を振り返るとともに、今もし買うならいくらなのか? 最近のオークション相場をチェック。今回は1975年にポルシェから登場した930型「911ターボ」、いわゆる「930ターボ」です。
水平対向6気筒ターボの速さがお子さまたちを魅了
スーパーカーブーム全盛時は、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェが御三家として注目された。ブームの牽引役となった12気筒エンジン搭載車のフェラーリ「BB」シリーズとランボルギーニ「カウンタック」のみならず、水平対向6気筒ターボエンジンを積んでいるポルシェ「930ターボ」の速さ&カッコよさにも子どもたちは魅せられたのだった。
1975年から市販された930ターボは、ポルシェのロードモデルとしては初のターボエンジン搭載車だ。ノンターボモデルの911シリーズよりも大きく張り出したリアフェンダーと巨大なリアウイングを特徴としていた。
車両の型式がアメリカのバンパー強度規定に沿った5マイルバンパーを持つ930型だったことにより930ターボと呼ばれていたが、当時の子どもたちはそのような大人の事情を気にしていなかったので、「なんで911ターボじゃないんだろう?」とうっすら思っていたものの、「この幅広ポルシェ 911は930ターボなのね」と素直に受け入れていた。
想像上のターボサウンドに心を躍らせていた
スーパーカーブーム全盛時に発行された子ども向け書籍にたくさん登場していた930ターボは、「スタイルは普通の911と同じだがターボチャージャーでパワーアップされているので速い」、「水平対向6気筒ターボエンジンのエキゾーストノートがターボサウンドと共鳴するとき疾風が巻き起こる」といった言葉でその高性能ぶりが説明されていた。
1970年代当時の日本において、930ターボのエキゾーストノートとターボサウンドが共鳴したことによる疾風を感じる機会は皆無だったが、往時の少年たちは「スゲェ~ぞ! 930ターボは!!」と熱くなったのであった。
レースでの934&935の活躍も人気を加速
そして必ずと言っていいほど、「930ターボをレース車に近くしたのが934ターボで、934ターボをベースとしたグループ5カテゴリー用のレーシングカーが935ターボ」という解説も添えられていた。この3台が並んで語られるときは、シルバーの930ターボ、オレンジ色の934ターボ、マルティニカラーの935ターボという組み合わせが定番だったので、この文章を読んで、そうそう、そのカラーリングだった! と懐かしがってくれる自動車趣味人が山ほどいるはずだ。
ちなみに、プライベートチームに市販するグループ4カテゴリー用のレーシングカーが934ターボで、ワークスチーム/サテライトチーム/プライベーターが世界メーカー選手権などを戦うためのレーシングカーが935ターボであった。だが、子どもたちにしてみれば、そのような国際自動車連盟の規定は難解だったので、934ターボと935ターボの大迫力ぶり&輝かしい戦績もナイスアシスト状態となり、930ターボの好印象につながったのである。
今でも手をかければ本来の性能をきっちり発揮
930ターボは現在もカーマニアのコレクターズアイテムとなっており、2022年5月にRMサザビーズが開催した「MONACO」オークションではグリーンの1976年式ポルシェ930ターボが30万313ユーロ(当時レートで邦貨換算約4000万円)で落札された。ポルシェは各部をリセットすれば往年のモデルも本来の性能をきっちり発揮してくれるので、4速MTを駆使し、イタリアン・スーパーカーをカモってみるというのも一興だろう。
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