21世紀のビジネスシーンを一新するコマーシャルバンだった
世の中にあるプロユースもいろいろだ。身近なところではホームセンターが建築や土木関連の職人向け資材を売る店、飲食店向けに業務用の食材を取り扱うスーパー、業者向けの調理器具や食器を揃える東京浅草のかっぱ橋道具街など。いずれも一般の人も利用できるが、もともとはプロの業者向けが前提だった。
かつてバンといえばベース車種の派生モデルとして登場
ところでクルマの世界でいうと、いわゆる4ナンバーのコマーシャルカーである「バン」がプロユース。で、このバンは、かつては各車ごとにベース車種から派生する形で設定があったのが一般的だった。例えば1972年の東京モーターショーで配布されたトヨタのパンフレットで紹介しておくと、「クラウン」、「マークII」、「パブリカ」、「カローラ」、「コロナ」と、ひととおりの車種でバンが用意されていたことがわかる。昭和な原風景の中で街に溶け込んでいたバンたちといったところか。
一方で世の中が世知辛くなった……とまでは言わないが、合理化が進む。するとそうしたバンは、ベースの乗用車がフルモデルチェンジしても旧型をベースに作られる手法がとられるようになる。さらに時代が経つと、今度は車名だけ付け替えて、共通ボディに集約されるようになっていく。
1982年に登場した日産「ADバン」がその代表例で、初代(現在は4代目まで継続している)は、「サニー」、「パルサー」、「バイオレット」、「オースター」と販売系列ごとに車名とわずかなグリル形状の違いで同じADバンを用意。加えて他社へのOEMとしても拡大し、マツダ「ファミリア」、三菱「ランサーカーゴ」などが誕生している。
ここでようやくトヨタ「プロボックス」&「サクシード」の話である。前段で初代日産ADバンの登場が1982年と触れたが、意外にもトヨタがバン(ワゴン)専用車のこの初代プロボックス&サクシードを登場させたのは2002年、つまり平成どころか21世紀に入ってのことだった。直前の「カローラ バン」、「カルディナ バン」に代わるモデルとして登場。当時のニュースリリースには「”ビジネスカーの革新”を開発キーワードに、商用車に求められる機能を徹底的に追求するとともに、先進の環境・安全性能を備えた、21世紀のビジネスシーンを一新する画期的なコマーシャルバン」とある。