日本に25台しか正規導入されていない限定車に乗った
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「BMW M4 CSL」です。世界限定1000台、日本割り当て25台という希少車へ乗る機会に恵まれた木下さん。名ばかりの限定車ではなく、BMWの本気を感じられる1台だったという。希少限定モデルに触れた印象を語ります。
乱発する限定という言葉に希少性を感じなくなっている
「世界限定○台」「20XX年限定記念モデル」
性根がひねくれているせいか、こういったタイトルにはあまり興奮しないタイプである。希少性を煽る文言には、裏があるのではないかと勘繰ってしまうのだ。
「生産が間に合わないから限定にしたんちゃう?」
「売れれば追加販売するんちゃう?」
この業界は僕から「素直」という言葉を奪ってしまったようなのだ。
だが、今回ドライブする機会を得たBMW「M4 CSL」に限っては、僕も素直になれた。たしかに世界限定1000台であり、日本への割り当ては25台という少数だが、希少性を煽るための世界限定1000台なのではなく、M社50周年という、正真正銘半世紀に一度の記念モデルなのである。おってミリオン超のBMW「3.0 CSL」がデビューするとはいえ、けして無視できないモンスターなのだ。
伝統のCSLの名に恥じない仕上がりは正直バーゲンプライス
しかも、CSLの語源となった「コンペティション・スポーツ・ライトウエイト」が表すように、軽量化は徹底している。カーボンやセラミックといった軽量素材を多用していることはもちろんのこと、フロアマットを変更してまで軽さにこだわったというのだから驚きである。
搭載する直列6気筒3リッターツインターボは、ブースト圧を上げるなどして550馬力まで強化している。その速さは激烈で、まさに瞬間ワープマシンに変身した。ただ単にドレスアップするだけで希少性を盛り込んだのではなく、本気で作り込んだ結果、1000台しか生産できなかったと解釈するのが正しい。つまり、真の意味での希少性なのである。
価格は2196万円。高価であることに違いはないが、その内容からすればリーズナブルにも思える。そう、希少性をふりかざして、金儲けに走った形跡もないのである。
今回試乗車として快く貸し出してくれたStudieに感謝である。
限定であることを安易に利用するモデルが少なくない現代だからこそ、本物の希少性が問われるような気がする。