新しいドリフトの姿や可能性を感じられた
日本で生まれたドリフト競技を、2004年からアメリカを横断する形で開催して世界を魅了している「フォーミュラドリフト」。そんなアメリカ発のドリフト競技をドリフト発祥の日本に逆輸入したのが「フォーミュラドリフトジャパン」だ。エキシビションでの開催を含め、2023年で日本上陸10年目に突入した。
2022年WRCワールドチャンピオンのカッレ・ロバンペラ選手が参戦
2023年5月20~21日、エビスサーキット西コースで開催された第2戦に突如登場したのが、2022年WRCワールドチャンピオンのカッレ・ロバンペラ選手。22歳の若きチャンピオンは、KR69 CUSCO Racingから参戦した。マシンはレッドブルGRカローラで、エンジンはHKSが製作を担当し、2JZ-GTE 3.4Lキット+GT7 5100 BBタービンという仕様で約1000馬力のパワーを発揮するもの。タイヤはヨコハマタイヤのADVAN NEOVA AD09で、ホイールはADVAN RacingのRS-DFを装着している。
カッレ・ロバンペラ選手は、水曜からエビスサーキットに入りマシンを調整。金曜日の公式練習では練習1本目から、進入速度、角度、ラインなど完璧な走りを見せ、その後も高レベルでのドリフトを連発していた。午前中はドライだった路面が、午後から降り出した雨によりウエットへ。他選手はドリフトアングルの確認程度でしか走らないなか、ウエット路面でも2本走行すると、1本目はスピンを喫するも2本目はすべてをコントロールした走りで、ドライ・ウエットでも崩れない強さを感じさせた。
20日(土)の予選では、1番手で登場となったカッレ・ロバンペラ選手。ウエット路面コンディションのなか89ポイントを獲得(ライン29点・アングル24点・スタイル35点)。終始ドライで行われた路面での予選1本目は、マッド・マイク選手(FD3S)が同点となる89ポイント(ライン27点・アングル25点・スタイル37点)、3番手に小橋正典選手(A90)が88点(ライン25点・アングル27点・スタイル36点)を出し、この3名が上位になった。
天候も回復し路面もドライとなった2本目、今度は本領発揮といわんばかりのドリフトで、97ポイント(ライン30点・アングル29点・スタイル38点)を出し、ブッチギリで予選トップを獲得したカッレ・ロバンペラ選手。2位はKANTA選手(JZX100)の92ポイント、3位は89ポイントの小橋正典選手、4位は同89ポイントのマッド・マイク選手となった。
注目したいのは、やはりカッレ・ロバンペラ選手の得点だ。フォーミュラドリフトの単走予選では100点満点(ライン30点・アングル30点・スタイル40点)で審査されるが、100点を出した選手はいまだいない。そんななかでラインは満点を獲得したという点に注目したい。
ラインという点のみで見ると、ウエット時でも29点を獲得しており、フォーミュラドリフトの審査員が理想とするラインを完璧に把握し、審査員が求めるライン取りをどんな路面状況でも完璧にできてしまう。ヨーロッパで行われている「ドリフトマスターズ ヨーロピアン チャンピオンシップ」に参加経験があるとはいえ、初参戦でこの完璧なドライビングテクニックには度肝を抜かれた。独特なルールで行われるモータースポーツ・ドリフトを理解していないドライバーには困難な仕事だ。