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アバルトの「595」「695」とは何の数字? 60年代イタリアでバズった「小さな爆弾」の歩みを振り返ろう

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 横澤靖宏

60年代後半から595/695のサソリ軍団が大増殖

フィアット・アバルト595/695SSは、当時イタリア本国や欧州大陸で人気を集めていた700cc以下の超小型ツーリングカー/GTレースでも活躍。とくに当時695SSだけに選択可能とされた純粋なレーシングオプション仕様車、10インチ径ワイドホイールとカルダンジョイントでワイドトレッド化を果たした「アセット・コルサ」バージョンは、「BMW 700」や、同じフィアット500ボディを流用するオーストリア車「シュタイア・プフ650TR」ら強力なライバルとともに、ツーリングカーレースで三つ巴の熱戦を繰り広げたという。

その後は1965年にフィアット500系が、前ヒンジのドアを持つ「500F」シリーズに進化したのに伴って、アバルトも同年3月から新ボディへと移行。その後もレースレギュレーションや市場の嗜好に対応して、暫時改良を施されることになった。

そして1960年代後半からの595/695ファミリーはまさに増殖を極め、1970年当時のアバルト&C.社の製品カタログには、じつに12車種ものフィアット・アバルト595/695系モデルが掲載されていた。

そのうえ、この当時のアバルト本社から発行されていたオフィシャルカタログや自動車専門誌のプライスリストには、アセット・コルサ仕様まで記されていたものの、翌1971年12月をもって、その幸福に満ちたキャリアに自らピリオドを打つことになったのだ。

若きオーナーは新旧「595」の2台持ち

さて、このページで主役を飾るのは若きアバルト愛好家、小池雄之さんが所有する1969年型フィアット・アバルト595SS。「Tipo 105」というアバルト独自の形式名が付けられ、ソレックス34PBICキャブレターを新たに採用したほか、軽合金製の専用吸気マニフォールドなどによって32psをマーク。最高速は130km/hに達したモデルである。

また4連メーターや、当時のレース用純正オプションだったFRP製ハードトップなども装備された個体である。

小池さんは20歳代のころから現代版のアバルト595を愛用していたうえに、2020年にこのフィアット・アバルト595SSを増車。「595」の2台持ちという、なんとも羨ましい状況にあるのだが、いつかは4気筒のクラシケ・アバルトも手に入れたいとのことであった。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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