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どうして「シルビア」と「セドリックワゴン」に「L型エンジン」を!? 320馬力のフルチューンに積み替えた理由とは

Y30セドリックワゴンのグレードはSGLだったので、純正はVGエンジン搭載モデルであった

すっかり懐かしいクルマになった「S14シルビア」

40歳以上の人にとっては懐かしい「S14シルビア」と「Y30セドリックワゴン」。いまではすっかり街なかで見ることも少なくなったため、実車があると思わず見入ってしまう2台を横浜ホットロッドカスタムショーで発見。ボンネットの中を覗くと、おやっと思えるおかしな点があった。なんと驚くことに、この2台が搭載するパワーユニットは、日産が誇る名機L型エンジンだったのである。S14シルビアのエンジンといえばSR、Y30セドリックにはVGが搭載されていたはず。それなのに、なぜ年代的にも古いL型エンジンに換装されているのだろうか。製作した谷島自動車の齊藤さんに説明してもらった。

S30フェアレディ用のエンジンに換装

「根っからのL型エンジン好きです」と話す齊藤さん。実は「S30フェアレディZ」を持っていて、当初は日常の足として使っていたそうである。しかし今となっては貴重なS30フェアレディZ、現在のコンディションをキープさせたいと考え、普段使いの街乗り専用車としてオートマの「S14シルビアQ’s」を購入。

しばらく乗ってみて、いくら移動の足といっても運転する以上はどこかに楽しさを求めたいと思うのがクルマ好きの性。そこで思いついたのが、非力なNAエンジンからパワフルなメカチューンを施したL2.8改3.1L仕様のエンジンへの換装だったわけだ。

幸いにもS30Zに使うため、リペア用にL型エンジンを1基作って持っていた齊藤さん。しかも、このエンジンは、亀有オーバーサイズピストンにソレックス50φを組み込んだフルチューンのパワーユニット。エンジン出力は320psをマークする。

エンジン換装を進めるには、エンジンマウントやメンバーなどワンオフ加工が必要になる。そして、シルビアが搭載する4発SRユニットはアルミブロックを採用した軽量コンパクトが売りのエンジン。昔ながらの直列6気筒のL型を収めるとなると、設計上かなり無理も出る。

だが、そこは楽しみながら作るのが齊藤さんの流儀。限られたスペースに入るように創意工夫を施した。その苦労の跡はバルクヘッド等に見られるという。

また、このエンジンルームをよく見ると、ドリフトマシンで流行のサイクルフェンダーも取り付けられていた。このサイクルフェンダーとは、大口径ホイールを履かせてもインナーフェンダーにタイヤが当たらないようにするための改造である。

ハンドルのキレ角をアップさせるので、ハイスピードからのドリフトにおいて、エグイ角度をキープしたまま迫力のドリフトが可能となる。最近では、スタンス系のエアサス装着車にも使われるケースが多い。その手法をL28改3.1Lエンジン搭載のシルビアは採用していた。

トランスミッションはR32用5速に換装

トランスミッションについては当然マニュアル化されている。組み合わせたのは、「R32スカイライン」純正5速トランスミッションで、シフトポジションにこだわり、純正とほぼ変わらない位置に設定している。そして、これが大切なことだが、街乗り仕様として、ちゃんとエアコンやパワステも装備し、快適に乗れるようにしている事もポイントだ。

もう1台のY30セドリックワゴンについてみてみよう。このクルマの持ち主が、L型エンジン搭載のS14シルビアを見て、自分の愛車も同じようにして欲しいと谷島自動車・齊藤さんに依頼にして製作された1台であった。

グレードはSGLだったので、純正はVGエンジン搭載モデル。スペース的には問題なかったが、5速トランスミッション化に伴ってベストな位置を追求するため、L型用のカマをうまく使って装着。プロペラシャフトをショート加工し、ハンドリングを良くするためにラックアンドピニオン加工も施しているということだった。

このY30セドリックワゴンが搭載するエンジンは、S14シルビアと基本的に似ているが、排気量はL2.8改3.0Lでキャブはソレックス44φをセットしている。そして、このクルマも、当然だが快適装備はそのまま使えるように作り込まれている。

* * *

L型エンジンマニアがこだわって作った2台。普通の考えでは思いつかない発想の裏には、このエンジンを搭載する理由もしっかりとあった。それは、L型エンジンのシンプルな構造がもたらすトラブルの少なさと耐久性だ。強いパワーユニットなので、油と水の温度管理さえしっかりやっていればOK。また、L型メカチューンサウンドは旧車乗りならずともそそられる。エンジンをかけた瞬間の振動も含めて、メカメカしい雰囲気が昭和世代の心に突き刺さるわけだ。

こうしたノリと勢いのあるトリッキーな作り込みは、アラフィフ世代ならば必ずや心に響くことだろう。

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