81周中12回のコーションが出されたほど荒れたレースに
アメリカで最も人気のあるモータースポーツである「NASCAR(ナスカー)」。そのナスカー界で唯一の日本人オーナーである服部茂章が率いる「Hattori Racing Enterprises(HRE)」は、2023年シーズンもナスカーの3大トップカテゴリーの「カップ」、「エクスフィニティ」、「クラフツマン・トラック」のトラックシリーズに長年参戦を続けている。2018年にはシリーズタイトルも獲得し、2022年は2台体制でフルエントリーをしてきたHREだが、今シーズンは若手ドライバー、テイラー・アンクラム選手を今季も起用し、トヨタ「タンドラ」の1台体制でシリーズフル参戦中だ。
クラッシュが多発した第10戦
ノースカロライナ州ウィルクス郡にあるノース・ウィルクスボロ・スピードウェイで開催されたトラックシリーズ第10戦「Tyson 250(250周=156.25マイル)」は、HREとして今季初の2台体制となった。今回チームに加わったのは、2017年のトラックシリーズチャンピオンであるクリストファー・ベル選手。豊田通商カラーをまとったHREの61号車のステアリングを握る。
1996年以来、トラックシリーズ初開催となった0.625マイル(約1km)のショートトラックであるノース・ウィルクスボロ・スピードウェイ。決勝前日の2023年5月19日(金)午後3時過ぎにプラクティスから好調で、トヨタ勢2番手となる20番手(21秒099)、アンクラム選手は26番手タイム(21秒145)を記録した。
しかし、その夜に降った雨の影響により路面コンディションは悪化。レース当日の午前10時30分からスタートする公式予選では、今回スポット参戦となる61号車のベル選手が出走順トップという不利な状況での走行を強いられる。しかし、そのブランクを感じさせない走りで前日のタイムを上まわる20秒281で9番グリッドを獲得。一方のアンクラム選手もプラクティスのタイムを上まわる20秒781で17番手からのスタートに決まった。
第1ステージ:70周/第2ステージ:70周/第3ステージ:110周、合計250周でチェッカーが出される3ステージ制で行われるこの日のレースは、オーバータイムで2周が追加に。クラッシュが頻発したタイミングでは、12回のコーションが出されるほどの荒れたレースとなった。
この日、レースの中でもっともひどい事故となったのが、201周目に起きたアンクラム選手が絡むクラッシュ。10番手争いを展開する6台のパックの中で、3ワイドのアウト側に位置していた16号車が押し出される形でアウト側のバックストレッチウォールに衝突。そこでスピードの落ちた16号車に追突する形で3台がクラッシュしてしまった。
アンクラム選手は26位、ベル選手は16位でチェッカー
アンクラム選手は、8列目のアウト側からグリーンフラッグを受け、今回もイエローコーションを活用したピット作戦で第1ステージを10位で終える。第1ステージ終了から第2ステージのリスタートまでのステージコーション中はコース上に留まり、第2ステージも10位で終えた。レースの大部分でトップ10内を走り続けていたが、最終的に26位でフィニッシュとなった。
そしてもう1台、今回HREの「#61 TOYOTA TSUSHO TOYOTA TUNDRA」で参戦となったクリストファー・ベル選手は、2018年以来初のトラックシリーズのスタートを切った。2017年のクラフトマン・トラック・シリーズのチャンピオンは、スタートから素晴らしいペースで追い上げて第1ステージのほとんどでトップ5内を走り、3位でステージ・チェッカー。つねにトップ集団の中で快走を続ける。
イエローコーションによる80周目のリスタート時には、2番手に61号車、その後ろに16号車が並んでリスタート。しかしこのステージでの、ハイペースの追い上げによるリアタイヤの消耗が激しく徐々に順位を下げてしまう。
そこからステージ2の終了までは我慢の走りを続け、140周目のステージコーションでタイヤ交換とマシンに調整、給油を行い最終ステージは11番手からスタートとなる。最終ステージでもベル選手はまたもや怒涛の追い上げを見せ4番手まで浮上するが、他車からの接触によりマシンやタイヤに損傷を受けペースが下がるものの、最後まで粘り強く走り切り16位でチェッカーを受けた。