2000GTの陰に隠れてしまったがハコスカには欠かせない存在
通算50勝というモータースポーツの世界で輝かしい歴史を持つ3代目「スカイライン」。初代モデルからレースの勝利が販売に直結する時代背景もあり、プリンス自動車の時代から勝つための情熱と技術力の投入が続けられてきたクルマだ。今回は「GT-R」ではなく、「1500スポーティGL」にスポットを当てる。
プリンスの血をひくG15型の進化系エンジンを搭載
スカイラインは2代目のS50系からは軽量かつ剛性の高いモノコック構造のフレームを採用し、走りの実力だけでなく安全性も飛躍的に高めている。「日産スカイライン1500」を名乗った3代目のC10型はタクシー需要を意識しない、ファミリーカーとして最適なサイズを狙った。また、新しいファンを獲得する使命も帯びているから、ワイドなバリエーション展開をしている。
量販の要となる1500シリーズは、ダイナミックで美しいスタイリング、快適な居住性、100マイルカーとして満足できる高速性能、信頼できる安全性などを掲げて、1968年8月に登場した。
ボディサイズは、全長4235mm、ホイールベース2490mm、全幅は1595mmと、2代目の最終型(S57D型)よりひとまわり大きくなった。しかし、全高は1405mmと135mmも低く抑えられている。
グレードを大別するとデラックスとスタンダードに分けられ、フロントマスクなどが違っていた。また4ドアセダンのほか、商用車のバンとワゴン登録のオシャレなエステートを用意。デラックスにはツーリング、ベンチシートのファミリー、4速フロアシフトのスポーティと、3つのインテリアを用意。ダッシュボードは水平基調で、横長のスピードメーターを採用している。
C10型スカイラインの自慢のひとつは、当時の最先端をいく安全装備の採用である。モノコック構造のボディは、衝突時のエネルギーをボディの前端部で吸収するように設計されていた。また、アメリカの自動車安全基準22項目のうち、20項目を満たしている。非採用は衝撃吸収式のコラプシブルステアリングとフロントの合わせガラスだけだった。フェンダーミラーも可倒式とした。
新開発の1.5Lエンジンは耐久性や静粛性が向上
注目のエンジンは、2代目スカイラインの最終型(S57D型)に初搭載されたG15型1.5L直列4気筒SOHC。クロスフロー燃焼室、5ベアリング支持のクランクシャフトなどを備えた高性能ユニットで、レース用に開発されたクロスフローヘッド、V型バルブ配置のGR7B型直列6気筒エンジンの流れを汲んでいる。
ただしS57D型が搭載したG15型とはシリンダーブロックが異なり、一体化した特殊鋳鉄製を採用するなど数多くの改良を加え、耐久性や静粛性を向上している。
左側に12度傾けて搭載され、キャブレターは可変ベンチュリー式1基だが、電磁ポンプも装着している。最高出力は88ps/6000rpm、最大トルクは12.2kgm/4000rpmだ。トランスミッションは3速コラムMT、4速フロアMT、そしてボルグワーナー製の3速ATを用意する。1971年秋にマイナーチェンジでパワーアップを敢行した。
サスペンションは、フロントが新設計のストラット、リアは半楕円リーフスプリングのリジッドアクスル。デラックスはリーフスプリング前側の板の上にゴムのインナーリーフを挟み込み、テンションリーフを1枚加えてノイズや振動を抑え込んでいる。これによってハンドリングと乗り心地も大きく向上させていた。
1969年8月、ローレルから譲り受けた1815cc G18型SOHCエンジンを積むスカイライン1800を追加設定。1970年秋には1800に2ドアハードトップを追加。1971年9月には1500にもハードトップを加え、バリエーション展開を完結。2000GTの陰に隠れて目立たなかったが、標準ノーズの4気筒エンジン搭載車もまた、ハコスカを語るうえで欠くことのできないプレイヤーだ。
スカイライン1500 スポーティGL(C10)
●年式:1971
●全長×全幅×全高:4205mm×1595mm×1405mm
●ホイールベース:2490mm
●トレッド(F/R):1325mm/1320mm
●車両重量:965kg
●エンジン:G15型 直4SOHC
●総排気量:1483cc
●最高出力:95ps/6000rpm
●最大トルク:13.0kgm(127N・m)/40000rpm
●変速機:4速MT
●サスペンション(F/R):ストラット/半楕円リーフスプリング
●ブレーキ(F/R):ディスク/リーディングトレーリング
●タイヤ:6.15-14-4PR
●新車当時価格:67万9000円(1500DX)
■「国産名車グラフィティ」記事一覧はこちら