360ccフロンテクーペの後継車として550cc規格で登場
「第3回Kカーミーティング2023」の会場では、360cc時代の往年の名車から、西暦2000年までの20世紀の軽自動車が集まった。その中でも、360ccから550ccへと規格が変わった後に登場したスズキのパーソナルクーペ、「セルボ」に乗るオーナーをご紹介しよう。
女性向けパーソナルクーペという位置づけ
規格が360ccから550ccへと変更された1976年ごろは、軽自動車という枠組みの中で新たな顧客獲得を目指すべく、メーカー各社から魅力的な車種が発売された時代でもあった。
1977年に発売されたスズキ「セルボ」は、国産軽自動車初の2シーターとして登場した「フロンテクーペ」の後継として、この世に生まれた。
リアに排気量360ccの水冷2ストロークエンジンを搭載したフロンテクーペが、当時でも数少ない国産スポーツカーという位置づけだったのに対し、セルボは同じRR車でありながら、女性を主要ターゲットにしたパーソナルクーペに路線を変更。これが災いしたかどうかは別として、その後1979年には初代「アルト」、いわゆる「49万円アルト」が登場したことで、セルボは爆発的な売れ行きとはいかないまま、1982年に2代目へと引き継がれていった。
今回紹介する1981年式セルボのオーナーである山口和也さんは、10年ほど前にこの個体を入手。それから少しずつ各部を手直しし、現状まで仕上げた。
「一時期はホンダZを所有していたのですが、それを手放してしまったらなんだか物足りなくなってしまいまして(笑)。数年経過してから、たまたま某中古車サイトでこの車両が販売されているのを発見。しかもそのお店が比較的近隣だったこともあって、手に入れてしまったのです」
こうしてみると、別れた元彼女への想いを引きずってしまったことで、勢いで今の彼女とお付き合いを始めたかのような印象を受けるかもしれないが、山口さんにとってはセルボだからこそ選んだ、という大きな理由があった。
それは、山口さんが、ジョルジェット・ジウジアーロ好きということ。セルボの先輩であるフロンテクーペは、ベースデザインをジウジアーロが担当。この美しいクーペデザインがそのまま踏襲されたセルボは、まさにジアウジアーロの意思が受け継がれたスタイリングであり、いすゞ「ピアッツァ」も所有するほどジウジアーロを敬愛する山口さんにとって、この個体との出会いは偶然ではなく必然だったのだ。