一体、アラカンのシニアが乗れる羽根付き911はどこにある?
トラベル系コンテンツディレクターとして糊口をしのぐ筆者が、齢60を前にしてドライブ旅行やスポーツ走行にも挑戦したいという想いから、憧れだった羽根付き「ポルシェ911」の購入を決意。経済的にも体力的にもカツカツなアラカン・シニアにポルシェは翼を授けるのか? 今回は、どの水冷羽根付き911を狙うのか、中古市場を探索します。
水冷の羽根付きなら997型GT3が魅力的かも?
さて、水冷の羽根付き911を狙うことにしたが、じつは水冷化された911ターボには触手が伸びない。驚くほど速く、素晴らしく快適で、しかも相当スポーティと聞く。もちろんストリート・ポルシェ911の頂点モデルであることも存じ上げている。しかし、どうにも、子どもの頃から憧れていたのは、レーシングな香り漂うモデルなのである。レザー張りの豪華装備よりもライトウェイトといった仕様に心惹かれてしまうのだった。
そこでターゲットに絞った水冷の羽根付きモデルは、昔の「RS」に替わるホモロゲートモデル「GT3」。レーシングモデルの流れをくみながらも公道でも乗れ、しかも固定式リアウイング付きと、まさに憧れを具現化している現代のモデルだ。
GT3は1999年の996型から登場しているが、心を惹かれたモデルが、2006年から2011年までに生産された997型GT3だ。姿形も親しみのある空冷モデルっぽいし、ル・マンで活躍した「GT1」にルーツを持つクランクケースを用いた3.6Lや3.8Lエンジンであり、いわゆるメッツガーエンジンの系譜というストーリーにも魅力を感じていた。なお、「GT3RS」は予算面も乗りこなすにもハードそうな印象があって、ターゲットからは外した。
997型GT3がない! あっという間になくなる中古市場にガクゼン
ところが、調べているうちに、コイツもまたハードルが高いと思えるようになってきた。
「十数年も前のモデルだし、すでに最新型の992もデビューしている。991よりも予算低めで狙えるだろー!」
なんてのんきに考えていたのだが、いざ探すと前期も後期もタマ数は圧倒的に少なく、市場価格も高騰している節がある。しかも、物件があったとしても走行距離は5万km超えか、ミントコンディションのものばかり。筆者がかろうじて狙えそうなのは多走行車だが、サーキット走行にバリバリ使われているものも多かった。車体さえしっかりしていればいいとは思いつつも、整備や維持面でいささか心配になってきたのだった。
驚いたのは、しばらく時間を置いて見た時にはもう掲載情報がなくなり、「SOLD OUT」になっているケースが多いこと。モノによっては2週間も経たないうちに消えている。はやっ! ちなみに2019年頃の中古車相場は997前期型GT3なら1300万円くらいでも流通していたと記憶するが、2023年3月現在では、前期型も後期型もそのほとんどが価格「応談」となっている。
こんなマニアックなクルマ、一体誰が買ってるのだ? 空冷911同様、どうも円安の影響で海外に流出した個体も多いらしい。いきなり出鼻をくじかれたのだった。