トヨタの快進撃は止まらない
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「トヨタの営業利益」です。半導体不足といった不安要素などもありながら、日本企業の最高益を記録。その額、2兆7250億円。使い果たすとしたら、一体どれくらいの期間を要するのでしょうか?
ハチロクの新車が毎日納車されたとして何年かかる?
トヨタ自動車の営業利益(2022年4月1日〜2023年3月31日)が、2兆7250億円に達したと発表されました。営業収益は37兆1542億円。日本企業の最高益を今年も記録したわけですね。僕のような庶民には、全く実感のない数字です。
そこで、こんな計算をしてみました。質問をしますので回答ください。頭で計算しないほうが面白いですよ。あくまでイメージとして回答ください。回答時間は3秒としましょう。
「もし仮に、あなたが毎日300万円のトヨタ86を買い続けるとします。すると2兆7250億円は何年で使い果たすでしょうか?」
「チチチチチ……チン」
おそらく10年とか50年と回答した方が多いのではないでしょうか。あるいは100年と回答した方も稀にいるでしょう。実は僕はこの質問をよく知人にするのですが、最短で5年、最長で100年ですね。それ以上長い方はひとりもいませんでした。
正解は「約2460年」です。毎日300万円もの大金を使い続けても、トヨタが1年間に稼いだ利益を全て消費するには2460年が必要です。あなたの孫の孫の孫の……。
毎日、販売店からトヨタ86が自宅のガレージに運ばれてきます。それを365日繰り返しても約10億円です。そんな日々を10年間続けてもまだ約100億円です。100年で約1000億円。1000年で約1兆円。2兆7250億円はつまり、2000年を超えてもまだ消費し尽くせない数字なのです。そんな大金をトヨタは今年1年で稼ぎました。
しかも感心するのは、マネーゲームで得た利益ではないのです。企業買収を繰り返したり、株価や資産の含み益を金額に換算した数字でもありません。極端な話、ネジをひとつひとつ締めてこしらえたクルマを販売して得た現金収入です。堅実な業態でありながら、2兆7250億円を達したことには驚かされます。
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ちなみに、今から2460年を遡ると、われわれ日本は弥生時代になります。竪穴式住居で暮らしており、縄文式土器で生活したいたころですね。西暦では紀元前ですから、イエスキリストが産まれる前の時代まで遡ります。つまり、それほど途方もない歳月を、ずっとずっとひたすらトヨタ86を買い続けてもまだ、2兆7250億円は使いきれない数字なのです。
知人の多くがせいぜい100年と答えています。人間の寿命以上にはなかなか発想が飛ばないようですね。初夏の箸休めのコラムでした。
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