ロングノーズ×2シーター+豪華な荷室のコンセプト
イタリアのコモ湖畔を舞台に開催される、世界屈指の自動車のコンクール・イベント、「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」。初開催は1929年だから、まさに世界で最も長い伝統を誇るイベントということになる。近年はBMWのクラシック部門、BMWグループ・クラシックが積極的にこのイベントをサポートしていることなどから、その認知度はさらに高まり、毎年5月の第3週末には世界からカーマニアが風光明媚なコモ湖を目指すようになった。そしてアメリカのカリフォルニア州で8月に行われる「モントレー・カーウィーク」と同様に、この「ヴィラ・デステ」もまた、コンセプトカーやプロトタイプのクラスを作り、自動車メーカーがそれらをワールドプレミアする場として注目されるまでになっている。
走りのパフォーマンスとグラマラスなデザインを両立
2023年回もさまざまなコンセプトカーやプロトタイプがヴィラ・デステでは発表されたが、その中でもBMWから出品された「ツーリングクーペ」は、すぐにでも生産化に移行しても問題ないほどの完成度を誇る1台だった。
そのボディ・シルエットからもBMWのファンならば即座にイメージできるように、このモデルは1998年に誕生した「Z3クーペ」や、2006年に市場に投じられた「Z4クーペ」のデザイン・コンセプトを継承しつつ、現代的に、そしてエアロダイナミクスを追求してスタイリングされたモデル。ベースとされているのは現行型の「Z4」とのことだが、フロントグリルなどの造形は、Z4のそれとも異なる。
サイドウインドウやルーフも、もちろんこのツーリングクーペのための専用デザインだ。ルーフはテールゲートの上部に備えられるスポイラーによって、視覚的にはかなり大きなサイズと感じられ、グラマラスなリアフェンダーとともにエクステリアに力強さを演出する重要な役割を果たしているのが分かる。サイドウインドウも独自のデザインとなり、Cピラーの太さはこれもまた印象的な造形。ホイールはフロントが20インチ、リアが21インチと前後異径のサイズが選択されているが、これも走りのパフォーマンスを強く意識した結果なのだろう。
高級レザーで統一されたラグジュアリーなインテリア
一方インテリアは、高級なレザー素材で統一されたじつにゴージャスな仕様だ。リアのラゲッジルームにも同様の素材が使用されているが、それを見るといかにツーリング=ワゴン、あるいはハッチバックとして生を受けたモデルであるとはいえ、ここに荷物を積み込むのには若干の抵抗感を抱かずにはいられない。BMWはフェラーリのラゲッジバッグの製作でもお馴染みの、イタリア・モデナにあるレザー製品のスペシャリスト、スケドーニに、特別にこのツーリングクーペのラゲッジ・セットをオーダー。それをこのモデルに搭載したくらいなのだから。
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もしもBMWがこのツーリングクーペの生産化を決断すれば、かなりの人気を呼ぶことは間違いないだろう。だが現在の段階でBMWは、これは1台かぎりのコンセプトカーであるとコメントしている。はたして市場からの生産化を求める声は、BMWに届くだろうか。