筆者はかつてターボ仕様の中期型ピアッツァ・ネロを所有
デザインを中心に話を進めると、初代ピアッツァは当然ながら、生涯、大きなデザイン変更はなかった。ヤナセ版の「ピアッツァ・ネロ」が独自の角型4灯ヘッドランプ(北米版のインパルスと共通、後にランプユニットが変更され可動式カバーを廃止)を採用していたり、「イルムシャー」には専用の外観・内装が与えられたり、年式、仕様ごとにアルミホイール、リアスポイラーのデザインが異なっていたり……と、ディテールにはさまざまなものがあった。
筆者が所有していたのは4ZC1型ターボを搭載した中期型のネロで、ドアミラー、新デザインのデジタルメーター、目の粗いツイード調のシート表皮を採用。アルミホイールはザインが好みではなかったので、前年式までのプレーンなディッシュタイプに交換を依頼したうえで納車してもらった……そういうクルマだった。
車名通りのエボニーブラックで乗っていたが、あらためて振り返ると、ネロには用意のなかったアッソ・ディ・フィオーリ由来のシルバー色で乗りたかったという思いもあった。走りについて少しだけ触れると、セダンの「アスカ」譲りの2Lターボは、とにかく踏むと速いエンジンだった。
2代目はいすゞとヤナセで別々の車種が展開
ところでピアッツァは1度だけフルモデルチェンジを受け、2代目が登場している。ただし当時のジェミニ(FF)をベースに仕立てられた点だけは初代と共通していたものの、クルマの成り立ちは、北米向けジェミニである「ジオ・ストーム」のクーペ版「インパルス」を国内展開したもので、1991年8月に新型ピアッツァとして発売された。
また少々ややこしいのは1990年5月には、ヤナセから「PAネロ」なるモデルが発売になっていた点。当時のヤナセの広報資料には「ピアッツァ・ネロの後継車の位置付け」と明記されており、つまり2代目ピアッツァはいすゞ版とヤナセ版とでは別々の車種になったということだった。
エンジンについてはPAネロが1.6LのDOHCだったのに対していすゞ・ピアッツァは、M100ロータス「エラン」も搭載した1.8L版のDOHCを搭載。グレードも初代で評判だった「ハンドリング・バイ・ロータス」をメインに据えた設定だった。手元にはピアッツァ、PAネロともそれぞれ貴重なカタログが1冊だけあったが、見比べると、ヘッドライト、Cピラーまわり、リアと、両車でそれなりに作り分けがされていたことがわかる。