新型日産セレナe-POWERはアウトドアでは使えるのか
ファミリー層に人気のミニバンである日産「セレナ」は、2022年11月にフルモデルチェンジを発表。そしてエンジンで発電しモーターで駆動する「e-POWER」搭載車が、ガソリン車に遅れて2023年4月に発売された。受注の半数がe-POWERという注目モデルを、モータージャーナリストの青山尚暉氏がアウトドア目線でチェックした。
2/3列目をフラット化した際の快適度がライバルを圧倒
国産Mクラスボックス型ミニバンである日産セレナが新型となった。セレナと言えばファミリーユーザーや子育て世代向けから絶大な支持を得ているモデルだ。
ところで、空前のアウトドアブームとなっている今、ファミリーでアウトドアやキャンプ、車中泊を楽しむ機会も増えている。では、新型セレナはそうした需要にしっかりと応えてくれるのだろうか? アウトドア向きのクルマと言えば、「エクストレイル」のようなSUVがまず思いつくところだが……。
最初に結論を言ってしまえば、新型セレナはアウトドアや車中泊にも最高のミニバンと断言できる。それも、国産Mクラスボックス型ミニバンの中で、もっともアウトドアや車中泊に向いているとも言えるのだ。
その理由は3つ+αある。ひとつ目のアウトドア適性ポイントは、車内をお座敷化したり、ベッド化することが容易かつ、2-3列目席フラットアレンジでの実測ベッド長(お座敷長!?)がクラス最大の2150mmもあること(トヨタ「ノア」&「ヴォクシー」:2080mm、ホンダ「ステップワゴン」:2040mm)。身長180cm超えの人でも真っすぐに寝られるベッド長を確保しつつ、そのフラット度で新型セレナがライバルを圧倒する点である。
実際、筆者は新型セレナの2-3列目席をフラット化(2列目席のヘッドレストは取り外す)して寝てみたのだが、頭をリア方向にした場合、凸凹が最小限で「これならマットレスがなくてもしっかり寝られる」と思わせてくれたほど。
3列目席背もたれは完全フラットにできるだけでなく、やや角度をつければ、上体を起こした姿勢になり、読書などにもうってつけ。逆流性食道炎対策にも効果的だ。
このポイントは、多彩なシートアレンジを考慮した2-3列目席のシート形状だけでなく、クラス唯一となるスマートマルチセンターシートの存在も大きい。
ノア&ヴォクシーやステップワゴンの2列目席は、キャプテンシートまたはベンチシートを購入時に選ぶ必要がある。もし2列目席の豪華でプライベート感覚あるキャプテンシートを選択したとすれば、ノア&ヴォクシーの場合は2-3列目席フラットアレンジ時の2列目席左右部分に隙間ができてしまう。2人での就寝には大きな影響がないかもしれないが、車内をくつろぎのお座敷化する際のデメリットにはなってしまうのだ。なおステップワゴンのキャプテンシートは中寄せスライドでき、ベンチシート化が可能なものの、2列目席シート幅は新型セレナのスマートマルチセンターシート使用時の1260mmに対して1030mmと狭くなってしまう。
その点、8人乗りで2列目席のキャプテンとベンチのアレンジが自在かつ、ベンチシート状態にしてもスマートマルチセンターシートによって十分なシート幅(ベッド&お座敷幅)が確保できる新型セレナは、2-3列目席フラットアレンジ時のベッド&お座敷床面の広さが際立つことになる。
もちろん、車内のベッド化やお座敷化をしても、倒した3列目席の下がたっぷりとした物入になるから、荷物の収納にも困らない。さらに、防水&撥水シートが用意されているのも、なにかとシートを汚しやすいアウトドアや車中泊で役立つに違いない。