流れの悪さを象徴するようなレース展開が続く
アメリカで最も人気のあるモータースポーツ、NASCAR(ナスカー)の3大トップカテゴリーの「カップ」、「Xfinity(エクスフィニティ)」、「CRAFTSMAN Truck(トラック)」。このうち、トラックシリーズに長年参戦している服部茂章氏は、現役ドライバーを引退してからも、ナスカー界で唯一の日本人オーナーとして「Hattori Racing Enterprises(HRE)」を率いている。今シーズンも若手ドライバーのテイラー・アンクラム選手を継続起用し、トヨタ・タンドラで参戦中だ。
12番グリッドを獲得しスタート
トラックシリーズは、2023年6月3日(土)にイリノイ州マディソンにあるワールドワイド・テクノロジー・レースウェイ(WWTR)で第12戦「Toyota 200」(160周/200マイル)を開催。WWTRは1周1.25マイルのトラックで、ターン1-2が狭く、ターン3-4がゆるやかなタマゴ型のオーバル。ターンはフラットでピットロードの入り口が非常に狭いことが特徴的なコースとなる。
シリーズは、プレイオフまで残り5戦ということもあって、各チームとも1ポイントでも多く取ろうという作戦を繰り広げてくる。今シーズンのHREチームの16号車は、これまでの11戦を終えて、プレイオフ・カットラインから63ポイント遅れた15位となっている。HREの16号車に乗るアンクラム選手は、WWTR戦には2019年にデビュー、過去4回出場しており、2020年の12位が過去最高位となる。
6月2日(金)午後6時(東部標準時)からの練習セッションでは22番手のタイムであったものの、「少しタイト(アンダーステア)だが、その方向性は良い」とアンクラム選手はコメント。続く予選セッションで33秒051のタイムでタンドラ勢トップとなる12番グリッドを獲得した。そして迎えた6月3日(土)午後1時30分、うだるような暑さの中、レースはスタートした。
アンクラム選手は16位でフィニッシュ
6列目アウト側からスタートしたアンクラム選手は、いまだタイトな16号車を操りながら、13周目には9番手までポジションアップ。今回の160周のレースは、35周目と70周目にチェッカーが出される3ステージ制となるが、HREは第1ステージのチェッカーが出される7周前に出たイエローコーションを使って早めにピットインする戦略を取り、14位で第1ステージを終える。
リスタートとなった第2ステージでは16号車は終始トップ20圏内で走行を重ね、第1ステージ同様、ステージチェッカー直前にピットインし、11位で第2ステージを終えた。各車がステージコーションを使ってピット作業をするためにピットに戻ると、コースにとどまった車両の中で、16号車は3番手までポジションアップし、最終ステージのリスタートを待つ。
この最終ステージでは、アンクラム選手はつねにトップ集団でバトルを展開し一時は2番手で走行も続けていた。そして16号車は121周目に、どこよりも早くグリーンフラッグ下で最後のピット作業をしたのだが、28番手でコースに戻ったところで、イエローコーションが出され、この戦略は失敗。16号車は1周遅れを余儀なくされることになった。
給油を済ませたことでレース終盤に上位勢の前に出る作戦だったわけだが、イエローコーションによるペースカーランが長く、トップグループのマシンが給油のためにピットに入る必要がなくなってしまった。残り数周で16号車には「ラッキードッグ」の権利を与えられ、トップと同一周回には戻ることができ、何台かをパスできたことで、アンクラム選手は16位でフィニッシュした。
HREにとっては、流れの悪いときを象徴するようなレース展開が続く。残されたレース数の中でプレイオフのカットラインまでに多くのポイントを獲得せねばならない。トラックシリーズ次戦は、6月23日(金)にテネシー州ナッシュビルにあるナッシュビル・スーパースピードウェイで開催される「Rackley Roofing 200(150周/200マイル)」となる。