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ドアも屋根もない新型フィアット登場で「第1回横道選手権開催」!? 70年ぶりに復活した「トポリーノ」とは【週刊チンクエチェントVol.07】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: Stellantis

超魅力的な小型モビリティであることは間違いなし

2023年5月31日に本国のフィアットから復活のアナウンスがあった新型トポリーノも、2シーターのオープントップというスタイルを継承してる。だが、決定的に違っているのは、これは大衆車ではなくスモールモビリティというべき存在だということ。そしてバッテリーEVだということ。いや、実際のところフィアットからのプレスリリースには新型トポリーノの「名前とファーストイメージを公開する」ということと「100%電気自動車」であるということ、「持続可能なアーバンモビリティ」であるということが記されてるだけで、詳細に関してはまったく触れられていないし、発売日どころか正式発表がいつ頃になるのかの予告すらない。

ただ、もうひとつはっきりわかることがあって、新型トポリーノは初代フィアット500のニックネームを名乗ってはいるが、スタイリングデザインのモチーフになったのは間違いなく2代目チンクエチェントである、ということ。顔つきもお尻の具合も、どこからどう見ても2代目フィアット500なのだから。おまけにドアというものがなく、代わりに取り外しが可能なロープで車内と車外を分けている。そのあたりは「ジョリー」にも似ている。

そのジョリーというのが何かといえば、2代目フィアット500をベースにして作られた、いわばビーチカーのようなものだ。フィアット創業者の孫であり当時は副社長だったジャンニ・アニェッリが、自分のヨットに積んで港から港へと渡り、行った先の港町やビーチでアシに使うため、カロッツェリア・ギアに作らせた。それが本当の意味でのセレブリティたちの目にとまり、結果、ある程度の数が生産された。現在でもいくつかのカロッツェリアで2代目チンクエチェントを素材にしてレプリカが作られているが、当時モノのオリジナルはおそらくせいぜい100台くらいしか現存してないだろうといわれている。

ビーチカーのフィアット500ジョリー

ジョリーはまさにフェデリコ・フェリーニの映画『La Dolce Vita(=甘い生活)』の世界から生まれたようなクルマなのだが、新型トポリーノはその世界観をも持ちあわせてるわけだ。雨が降ったらどうするんだ?  という問題があるにはあるのだけど、なんだかとっても魅力的な小型モビリティに思えてこないだろうか?

すでに触れたとおり、新型トポリーノに関しての詳細はいっさい発表されていない。だが、あえて推測するなら、おそらくこれは同じステランティスに属するシトロエンの小型モビリティ、「アミ」をベースとするものなんじゃないか? と思う。フランスでは14歳から乗ることができる「クワドリシクル」という超小型車カテゴリーのクルマで、たとえば50台限定で発売された特別仕様車がたった20分たらずで売り切れちゃったりしたこともあるくらいの人気モデルだ。

だとすると、バッテリーの蓄電容量は5.5kWhで最高出力は11.1ps、航続距離は最大70km、最高速度は45km/h、充電は220Vソケットで約3時間で完了、というシロモノ。全長2.4m、全幅1.4m、全高1.5mと、本当に小さい。フツーのクルマに対するのと同じことを求めたりせず、小型モビリティにふさわしく原チャリ感覚で使ったりするのであれば、充分以上の存在だろう。

じつはフランスでアミには試乗したことがあるのだけど、僕が普段乗って出てるチンクエチェントより遙かに遅いのに、パーン! と膝を叩いちゃうくらい楽しい気分になれたことをありありと覚えてる。だってこんなカタチをした物体が走ってるだけでオカシイのに、その中に自分がいて操縦してるのだ。それだけで笑いがこみ上げてくる。デザインのチカラというのは偉大だ。そしてアミのスタイリングもシトロエンらしく奇妙奇天烈で魅力的ではあるけれど、新型トポリーノはもっとストレートにニコニコできちゃう愛らしさを漂わせてる。ほら、やっぱり魅力的に思えてくるでしょ?

いやいや、まだ新型トポリーノがシトロエン アミと同じコンポーネンツを使ってるかどうかはわからないのだけど、もし仮にでも日本にもたらされることがあるならば、ターコイズブルーのチンクエチェントの横に並べて、遠くに行くときにはチンクエチェント、近くの買い物にはトポリーノ、という「甘い生活」をしてみたい……と心の底から思わされたのだった。

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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