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【1000キロ弱インプレ】マクラーレン「アルトゥーラ」のロングツアラーとしての資質とは? 街中は電動走行したいもの

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TEXT: 西川 淳(NISHIKAWA Jun)  PHOTO: タナカヒデヒロ/マクラーレン・オートモーティブ

シャシー全体の動きが手にとるようにわかる

満充電のアルトゥーラを都内で受け取った。電動(e)モードでスタートする。スペック表にはBEVとしての航続距離は31kmと書かれてあった。実際には20kmと少し程度だと思っておいた方がいいだろう。それでも都心を出発して最寄りの首都高もしくは高速道路入り口まではたどり着ける距離感だ。早朝や深夜の出発・帰宅に便利であることは間違いない。都内と洛中では電動走行で走りたいところだ。

マクラーレン アルトゥーラ

BEVで走るからには乗り手もできるだけ落ち着いた気分でいたいもの。エンジン音が聞こえてこないぶん、余計なノイズが入ってきやすいが、マイクロチップ入りのピレリPゼロやノイズ吸収型軽量スクリーンなどのおかげもあって上級サルーンのように静かに走る。

数kmで首都高に乗ったので、バッテリーにはまだまだ余力があった。そのまま電動走行を試みる。高速道路の制限速度を守って走っている限り、BEVのままだ。空気を切り裂く音だけが聞こえてくる。ミラーあたりから聞こえてくる風切り音がかえって気になるほど静か。

バッテリー容量が残り6%となったあたりでV8ツインターボが目を覚ます。パワートレインとハンドリングのモードをコンフォートにしてクルージングを続けた。

じつに快適だ。GTよりはっきりと静かなぶん、より安楽かもしれない。刻々と変化する路面に対してつねに柔軟性をもって対処する。これぞ軽くて硬いカーボンファイバー製ボディの恩恵というもので、アシが設計通りによく働いてくれるのだ。そんなシャシー全体の動きのひたむきさが手にとるようにわかる。

クルマが道をよく知っている

途中で雨がぱらついてきた。マクラーレンのロードカーといえば2駆のハイパワーミドシップカーのみ。それでも雨中を安心して進んでいけるのが従来までのモデルの特徴で、アルトゥーラもまたそんな実績をさらに上書きするかのようにいっそうの安心感とともに走った。横風にも強いから、トレーラーの脇や、トンネルとトンネルの間でもまるで怯むことなく高速クルーズを続けることができる。

アルトゥーラの美点は視界の良さにもある。それは文字通りの意味もあるけれども、根本的には視線をつねに落ち着かせることができるからだ。車体=キャビンが安定しているうえ、路面とフロントセクションの関係性がじつにわかりやすい。だから意識して前方を気遣うまでもなく、ほとんど無意識に車体は思い通り進んでくれる。これこそ「クルマが道をよく知っている」というやつだ。

気分的にはアッという間に残り150kmとなった。そろそろ洛中を走る準備をしたい。残念なことにアルトゥーラにはリチャージモードがない(同じくV6 PHEVのフェラーリ296GTBにはある)。パワートレインをトラックモードにすれば充電が始まるのだ。

トラックモードで走ると当然ながらやや煩くなってしまう。ガソリンを余計に使っているという感覚も甚だしい。それでも京都東インターを降りる頃、バッテリー容量は99%まで回復していたので、よしとする他ない。街中は、たとえスーパーカーであっても静かに駆け抜けるのが「スーパーカー乗りの心がけ」というものだろう。

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