スーパーGTデビューとなる若手ドライバーに注目
2023年シーズンのSUPER GT(以下、スーパーGT)は、8戦中5戦で450kmと長いレース距離が設定されている。そのためGT300クラスでは多くのチームが、レギュラードライバーの2人に加えて3人目となるCドライバー登録をしている。こうした背景から、2023年がSUPER GTのデビューとなるドライバーも多い。SUPER GTに久々に参戦する女性ドライバーとして話題の小山美姫選手もそのひとりだ。
若い頃から海外に挑戦してきた
25歳の小山選手は幼少期からカートを始め、2015~2019年にFIA-F4に参戦。2017年、2018年は女性ドライバーだけで争われるカテゴリーであるKYOJO CUPでチャンピオンを獲得。2019年は女性による国際シリーズ「フォーミュラ選手権Wシリーズ」に、同2019年と翌2020年はFIA F3アジア選手権に参戦し、海外のレースへ果敢にチャレンジしてきた。
2022年からは主な活動を日本に移し、フォーミュラリージョナルジャパニーズチャンピオンシップに参戦し、2戦を残したタイミングでチャンピオンを獲得した。カートからフォーミュラでステップアップを重ねてきたドライバーだ。
他2名のドライバーと遜色のないタイムを記録
小山選手は開幕前の富士スピードウェイの合同テストでルーキーテストに挑んだ。ルーキーテストは基準とされるタイムをスピンやコースアウトすることなく、12周連続してクリアすることで合格となる。富士スピードウェイでの合同テストでは合格することができなかったのだが、これは単純に小山選手の実力不足というわけではなかった。大雨となったテスト当日はタイヤとマシンのマッチングに苦労したことや、持ち込んだレインタイヤのセット数などの関係によって合格とはならなかった。
事実、4月に行われた富士スピードウェイでのテストでは合格した小山選手。シーズン序盤のテストではチームメイトのイゴール・オオムラ・フラガ選手や古谷悠河選手と同等のタイムで走れていたので、スーパーGTドライバーとしての小山選手の実力は確かなものだろう。それだけに、他2名のドライバーがGTマシンでの経験値をどんどん積んでいる現状にもどかしさを感じる部分もあるそうだ。
ドライビングではフォーミュラリージョナルの経験が生きる
ハコ車の経験がないわけではないが、近年はフォーミュラマシンでの活動が主体。しかし、レクサスRC F GT3でのドライビングにあまり戸惑いはなかったそうだ。それは2022年にチャンピオンを獲得したフォーミュラリージョナルでの経験が生きていると小山選手は語る。
「リージョナルと2秒くらいしかタイムが変わらないので、リズムやスピード感は非常に似ています。GTマシンの方が重たいですが、挙動もリアが重たいという印象は似ていますね。フォーミュラリージョナルに乗っておいてよかったと感じています」
フォーミュラやハコ車、重量といった部分よりもギャップを感じているのは電子制御に関すること。
「今までのフォーミュラでは基本的に電子制御がないマシンばかりでした。対照的に今シーズン乗るGT3マシンにはABSをはじめ、さまざまな電子制御が装備されています。もっとタイムを出すためには電子制御と仲良くしなければいけないなと感じていますね」
ここまで第2戦の富士、第3戦の鈴鹿と450kmレースは2回あったが、小山選手がドライブする機会はなかった。いつドライブする機会が来るのかを聞くと、レースの流れによると小山選手は答えていた。
そんな中でもセットアップの煮詰め方を聞いて、車載映像と照らし合わせたりすることで自身へフィードバックをしているそうだ。シーズンの今後に向けては、
「言われたことをキッチリとこなして、ポイント争いをできるようにチームに貢献したい。そしてチャンスが訪れたらしっかりと結果を見せられるようにしたい」と語っていた。
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2023年シーズンは、どこで小山選手がGTマシンをドライブできるか分からないが、インタビューの受け答えからは確かな自信を感じることができた。ドライブする機会が訪れるのがSUPER GTファンのひとりとしても楽しみだ。