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「マルツァル」の市販化モデル「エスパーダ」は「私にとってのロールス・ロイス」! フェラーリにない4座がビジネスチャンスになった!?【スーパーカー列伝19】

2021年2月のRMサザビーズオークションで17万3000ユーロ(邦貨換算約2200万円)で落札された1968年式ランボルギーニ エスパーダ

4座ながらも唯一無二のコンセプトとスタイルで一躍人気モデルに

1970年代中ごろ、子どもたちの周りにあるさまざまなモノがクルマ関連グッズと化した空前絶後の「スーパーカーブーム」。当時の子どもたちを熱狂させた名車の数々を振り返るとともに、今もし買うならいくらなのか? 最近のオークション相場をチェック。今回は4シーター車でありながらも一躍人気モデルの座を獲得した、ランボルギーニ「エスパーダ」です。

フル4シーター超高速ラグジュアリーGTのコンセプト「マルツァル」が前身

次世代の自動車像が地球環境をめぐる複雑な課題と絡みあって試行錯誤の中にある現代とは異なり、スーパーカーの祖となるモデルが次々誕生していた1960年代は、クルマの未来に対して子どもたちがシンプルに夢を抱くことができた。

そのような悦ばしい状況の中で世界に名だたるスーパーカーメーカーが魅力的なコンセプトカーを多数発表。1968年にデビューしたランボルギーニ「エスパーダ400GT」のオリジンとなったコンセプトカー「マルツァル」のような4シーターモデルまで登場した。

マルチェロ・ガンディーニがチーフデザイナーを務めていたカロッツェリア・ベルトーネで造られたマルツァルは、1967年のジュネーブ・ショーで発表された。当時、ランボルギーニのライバルであるフェラーリがフル4シーターの超高速ラグジュアリーGTを持っていなかったため、ランボルギーニの設立者であるフェルッチオが「これはビジネスチャ~ンス!」と確信。さっそくベルトーネに依頼し、誕生したのが大きなガルウイングドアなどを特徴とする4座モデルのマルツァルであった。

マルツァルは「ミウラ」用のV型12気筒エンジンの片バンクのみを使用した直列6気筒エンジンをリアに搭載し、4名乗車が可能となる広大なキャビンスペースを確保していたが、フェルッチオはその運動性能に納得しなかった。

V12エンジンをフロントに積んだ4座スーパーカーとして市販化

そこで、マルツァルのデザインをベースとして開発された量産モデルのエスパーダ400GTはV型12気筒エンジンをフロントに積みつつ、4座スーパーカーというコンセプトを実現。ようやく理想とするスーパーカーが完成したので、フェルッチオがエスパーダのことを「私にとってのロールス・ロイス」と評していたといわれている。

エクステリアデザインが個性的だったことがアドバンテージとなり、マルツァルはコンセプトカーでありながらスーパーカーブーム全盛時にさまざまな紙媒体で紹介された。そのため、子どもたちの中での認知度が非常に高く、マルツァルのアイデアを実用化し、再びガンディーニによるスタイリッシュなボディをまとうことになったエスパーダも4座ではあったが一躍人気モデルに。その特異なスペックを必死で憶えたクルマ好き少年がたくさんいたのであった。

ランボルギーニ初の4シーター車としても歴史的価値は高い

エアコンやパワーウインドウなどが標準で、小型のテレビやミニバーまで装備した超豪華インテリアVIP仕様まで存在していたといわれているエスパーダは1968年から1978年まで生産され、全部で1217台がラインオフしたそうだ。フル4シーター超高速ラグジュアリーGTというコンセプトを持つ後継のスーパーカーは、現在に至るまでランボルギーニからリリースされておらず、スーパーSUVの「ウルス」を展開している同社がエスパーダの現代版をリリースすることは今後もないであろう。

もはや自動車世界遺産だといっていいエスパーダ400GTだが、驚くような高価で流通しているわけではなく、2021年2月にドイツのカールスクロンでRMサザビーズが開催したオークションでは1968年式エスパーダが17万3000ユーロ(当時レートで邦貨換算約2200万円)で落札された。1968年に製造されたわずか37台のうちの21台目で、レストア後の走行距離が200km未満。ランボルギーニ社のクラシックカー部門であるポロストリコ認定車とのことなので、非常にリーズナブルな落札価格だったといえるだろう。

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