「ポルシェフェスティバル’23」はサプライズの連続
ポルシェの75周年を祝うアジア最大のポルシェコミュニティイベント「ポルシェフェスティバル’23」が2023年6月3日(土)~4日(日)の2日間にわたって、千葉県木更津市にある「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」にて開催されました。今回はこのイベントで日本初披露となった「911ダカール」やダニエル・アーシャム氏のアートカーなどを紹介します。
新型911ダカールと改良型カイエンを初披露
数あるプログラムの中でも今回のハイライトは、日本初披露となる新型「911ダカール」と改良型「カイエン」のジャパンプレミア。この発表でまず驚いたのは、プレゼンテーションに使われたモデル解説ムービーだ。歴代のポルシェ911や、911ダカールのルーツでもあるポルシェ「953」のヒストリー、そして3世代にわたるカイエンのモデルの変遷などを紹介する映像なのだが、なんとあの自動車専門番組『カーグラフィックTV』の世界そのものなのだ。その時代を知る人にとっては、懐かしさを憶えただろう。
聞けば、ポルシェジャパンがかつての制作チームをたずね、交渉の末、協働で製作されたものだそう。音楽プロデューサー・松任谷正隆氏によるオープニングテーマ曲「THE THEME OF WINNER」もそのままなら、オープニング映像も当時のシーンを採用。もちろん解説は声優・古谷 徹氏のナレーションと、番組さながらの映像で会場を沸かせたのだった。
911ダカールとともに伝説のレーシングドライバー、ジャッキー・イクスが登場
さらに驚かされたのは、4日(日)は元F1ドライバーにして、グループCのポルシェ「956」を駆ってル・マン24時間レースで6度目の優勝を果たしたレジェンド、ジャッキー・イクス氏がサプライズゲストとして登場したことだ。
イクス氏といえば、「キング・オブ・ル・マン」の異名を持つ一方、ラリーにも参戦し1983年にメルセデス・ベンツでパリ・ダカールラリーを制している両刀使い。もっとも1984年に総合優勝を果たした「953」は彼が開発テストに関わったモデルであり、「959」でも参戦している。ラリーシーンでもポルシェとの縁が深い人物だ。その彼が「911ダカール」をドライブし登壇したのだから参加者も大喜び。拍手喝采で迎えた。
ポルシェジャパン代表取締役社長フィリップ・フォン・ヴィッツェンドルフ氏との軽妙な掛け合いで、パリ・ダカールの貴重な話を交えながら、新型の911ダカールを披露。会場を楽しませていた。そこに、今度はドイツ本社より来日した、ポルシェAG セールスおよびマーケティング担当取締役のデトレフ・フォン・プラテン氏が登場。日本のファンとともに祝福できることを喜び、熱いメッセージを送るなど、これもまたポルシェファンにとって貴重な瞬間となった。
そういえばル・マンも今年でちょうど100周年。このイベント後の6月8日から記念すべきル・マン24時間レースがフランスで開催されたわけだが、きっとイクス氏にとっては厳しいスケジュールだったに違いない。わざわざこの日のため来日してくれたことに感動! 1ファンとしても本当に感謝感激のひと時だった。
なお、前日の3日(土)は、日本を代表するレーサーにして、日本人唯一のポルシェワークスドライバーを務めた生沢 徹氏がサプライズゲストとして登場している。ポルシェの伝説を生んできた2人のレジェンドの参加は、イベントを大いに盛り上げてくれたのだった。
カルチャーとしてのポルシェを実感! 時代を切り拓くアーティストとの共演
さて、新型車やレジェンドたちの登場もさることながら、カルチャーとしてのポルシェの魅力にも驚かされたイベントでもあった。もともとチューニングやカスタマイズは、ポルシェの魅力のひとつでありカルチャー。近年はレストモッドにバックデートなど、「Luftgekühlt」(ドイツ語で空冷の意味、英語圏で「ルフトカルト」と読んでいる)のムーブメントが世界的に人気だ。ポルシェ自体もまた、そうした動向に注目しながら、さまざまなアーティストたちとコラボレーションを試みて新たなカルチャーを発信しているのだ。
今回は、1955年製「ポルシェ356スピードスター」に日本の「わび・さび」を取り入れた作品プロジェクト「356 Bonsai」で知られるアーティストのダニエル・アーシャム氏が来日。「Fictional Archeology(フィクションとしての考古学)」という概念のもとに、アートや建築を手がけることで知られる彼の最新作のワールドプレミアがこのイベントで行われたのである。
その作品の名は「RWBA」。日本のポルシェチューナー、中井 啓氏率いる「ラウヴェルト・ベグリフ(RWB)」とのコラボレーションによる作品だ。「964」をベースに、フラットノーズ化。RWB流の大きなオーバーフェンダーを備えたオールホワイトのボディに、内装を全面アーシャム グリーンのレザーで仕上げている。
漫画家・麻宮騎亜氏によるコミック&ラッピングカーも登場
イベント会場には、アーシャム氏の大ファンであり、漫画『彼女のカレラ』の作者である麻宮騎亜氏による、「RWBA」を題材とした4Pの漫画がパネルとなって公開され、同時に『彼女のカレラ』に登場する3人の主人公をモチーフにしたラッピングカーも展示。アジア各国をはじめとする海外のメディアも注目する展示となっていた。
また、ポルシェAGが監修するカルトなメディア「Type 7」の編集長テッド・グシュー氏も来場した。先ごろ発売された第4号では、生沢 徹氏の特集記事が組まれ、グシュー氏の来日を機に、3日(土)には生沢氏との対談が実現。世界限定2000部という希少な本の販売とサイン会なども実施された。
ほかにも、ステージでは、Shōtaro Aoyama、Licaxxx、RHYME SO、アバンギャルディといったゲストパフォーマーが、最先端のサウンドを披露。ヘビーなクルマ好きが集まるとNerdyな(野暮ったい)雰囲気になりがちな、この手のイベントをスタイリッシュに盛り上げてくれていたのが印象的だった。