CドライバーとしてスーパーGTデビューする新人も多い
2023シーズンのSUPER GT(以下、スーパーGT)は、8戦中5戦で450kmと長いレース距離が設定されているため、GT300では3人目となるCドライバーを登録するチームが多い。そのなかには、2023年にスーパーGTデビューとなるドライバーも存在する。48号車「植毛ケーズフロンティア GT-R」をドライブする眞田拓海選手も、そんなドライバーのひとりだ。
カート経験はなくドライビングシミュレーターから実車へ
27歳の眞田選手は、近年のドライバーとしては珍しくカート経験がないドライバーだ。そんな彼がモータースポーツをやろうと思ったきっかけはレーシングシミュレーターだったという。
もともとスーパーGT、そして谷口信輝選手のファンだったそう。砂子塾長ことレーシングドライバーの砂子智彦さんが運営する「東京バーチャルサーキット」にて、谷口選手が講師を務めるレッスンがあり、応募したのが最初だったそうだ。
そのときは20歳の大学生。そこから東京バーチャルサーキットに通うようになり、21歳のときに「レースをやりたい!」と砂子塾長に相談。22歳で富士チャンピオンレースの「VITA」でレースデビューした。23歳で鈴鹿のVITAレースに、24歳でスーパー耐久のST-ZクラスにBMW M4 GT4でエントリーしてステップアップ。しかし、25歳のときのシーズンはレース活動をお休みすることに。
この空きシーズンでは一般的なスポーツ走行を多く経験し、セッティングを改めて学ぶことができたそうだ。そして26歳のときにFIA-F4にスポット参戦し、2023年はスーパー耐久ST-3クラスとスーパーGTに参戦している。
GTマシンへは戸惑いなく乗ることができた
眞田選手は事前にシミュレーターでトレーニングをしていたため、初めて実際にスーパーGTマシンに乗ったときも戸惑うことはなかったと語る。しかし、GT500との速度差や抜かれ方には驚いたそうだ。スーパー耐久でも抜いたり抜かれたりの経験がある眞田選手だが、ストレートスピードはもちろん強力なダウンフォースによりコーナリングスピードも速いGT500マシンは、高速コーナリング中など今まででは考えられないポイントでも抜かれることに衝撃を受けたとのこと。
また、タイヤにも悩まされたそうだ。スーパーGTは世界的にも珍しい、専用タイヤを開発するタイヤメーカー同士の争いもあるカテゴリー。そのため他のスリックタイヤと比べてもドライバーに求められる技量は高い。
「タイヤがウォームアップするまではとにかく慎重に行かなくてはならず、温まった後もタイヤパフォーマンスをキープするには、おいしい温度域をキープしなければならないのが難しい」と眞田選手。
第3戦鈴鹿までの段階で450kmレースは2回あった。これまでを振り返るといい環境で勉強させてもらうことができていると眞田選手は語る。チーム側も、初めてのスーパーGTなのだから何でも聞いてほしいというスタンスで、コミュニケーションも取りやすいそうだ。当然ながらプレッシャーもあるものの、眞田選手はスーパーGTへのチャレンジを楽しんでいるようであった。
「最高の特等席」で残りのレースも戦う
富士、鈴鹿と2つのサーキットで戦ってきた眞田選手は、これまでをこう振り返る。
「第3戦は、初めて鈴鹿でGTマシンを走らせたのですが、難しいコースながら今まで乗ったどのクルマよりもシャープに感じるので面白いですね。ほかのハコ車と比べると前荷重を作りすぎてしまうと上手く乗れない部分もあって、前後荷重のバランスを取りながら……というようにクルマ自体の攻略もいろいろと感じながらといった具合です。タイヤの温度管理も同じですが、GTマシンはバランスを取りながらのドライビングが必要ですね」
眞田選手はドライビングへのチャレンジに対して難しさを実感しながらも、そのチャレンジを楽しそうに語っていた。そしてスーパーGTという舞台そのものも楽しんでいるようだ。元々スーパーGTファンである眞田選手は、現在のドライバーというポジションを「ファンとして最高の特等席です!」と語っていた。
富士と鈴鹿の450kmレースでは中盤のロングスティントを担当。今回の鈴鹿は27周を走行し、スピンやオーバーランもなく安定したタイムを刻んでいた。
「今後の課題は、もっと一発の速さが欲しいのと、路面温度の変化で内圧が変わったときなどの状況変化に対応できるような臨機応変さを身に着けたい」とコメント。自身の課題を冷静に見据えている様子であった。
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450kmレースは今シーズンあと3戦。この3戦で眞田選手はどんな進化を遂げるのであろうか。