シートの座り心地が忘れられないほど印象的だった
なおBXではインテリアもガンディーニの手によるもので、回転ドラムに刻まれた数字を読み取る方式のボビン式スピードメーターやサテライトスイッチを備えるインパネは、現代のありとあらゆる場所がデザインされ尽くした感のあるインパネに比べ、清々しいくらいにシンプルな仕上がり。サテライトスイッチにはウインカーのシーソースイッチも備わっていた。シトロエンならではの1本スポークのステアリングホイールも採用されていた。なお途中のマイナーチェンジでインパネは一新され、メーターがオーソドックスなアナログ式になるなどしている。
さらにBXの特徴として忘れられないのが、シトロエン伝統の油圧空気式のハイドロニューマチックサスペンションを採用していた点。サスペンション型式の基本は、フロントがマクファーソンストラット、リアがトレーリングアームと機構的にはベースとなった当時のプジョー「305」と共通だ。
しかしスプリングの代わりに窒素ガスと鉱物性オイルを緑色の球体(スフェア)に封入し、それでショックの吸収とダンピングを行うサスペンション(や2655mmのロングホイールベース)により、シトロエンならではのフラットな乗り味をモノにしていた。
それと見るからに身体を包み込んでくれそうなシートもフカッ! と、ゆったりとした座り心地で、このシートも快適な乗り味の一翼を担っていた。筆者もBX現役当時の試乗の記憶といえば、このシートの座り心地はもっとも印象的で、今でも身体が憶えているほどだ。
ユーノス・チャネルでも扱われていたシトロエン
またBXではワゴンボディのブレークも設定があった。このブレークではハイトコントロール、セルフレベリング機能がじつに有効だったことはいうまでもない。
ラインナップには高性能モデルとして「16V」「GTi」も設定されていた。16Vはプジョー「405 MI16」とも共通の1904cc・DOHC(145ps/17.5kgm)を搭載し5速MTの組み合わせ。一方でGTiは同じ排気量のSOHC(120ps/15.6kgm)を搭載し、これに4速ATが組み合わされ、同じエンジンが19TZi(と同ブレーク)にも搭載された。
ところでBXは、当初はシトロエン/プジョー/サーブを扱っていた当時の西武自動車販売での取り扱い車種だった。しかし1989年からはそれに加え、マツダの5チャネル構想から、ユーノス・チャネルでも扱われるようになった。
カタログも西武時代は昔の輸入車のカタログの多くがそうだったように、本国に準じたシンプルなものだったが、ユーノスのそれは(写真の一部はそのカタログ)他のユーノス取り扱い車と同じ体裁で、内容も全26ページの充実した内容となっていた。
今のシトロエンは、SUV/クロスオーバー系のモデルまで用意し、市場のニーズに合わせている。だが、BXの頃のシトロエンは、素の状態の普通のモデルでも、そのままで十分に個性が光っていた。