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フィアット「600」が電気自動車で復活!? 突然、動画に現れた「セイチェント」とは?【週刊チンクエチェントVol.08】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: Stellantis N.V.

初代フィアット セイチェントはヒット作だった

初代セイチェントは、1955年から1969年までの間に245万台少々が生産された、なかなかのヒット作だった。そして前回紹介したトポリーノに代わる小型車として企画されたクルマだ。……あ。古い方の、だよ。なぜならトポリーノは2人乗り。けれど乗用車としては大人4人が乗れるパッケージングが望ましかった。で、トポリーノとほとんど同じ約3.2mという全長の中にそのスペースを確保するため、RRレイアウトを採用してフロントシートを前方にセットし後ろのスペースを確保する、という当時としては革新的かつ合理的な設計がなされたってわけだ。

設計したのはトポリーノの開発チームの中にいた、ダンテ・ジアコーサ技師。……と、そんなところからも勘の鋭い人は気づかれたことだろう。そう、セイチェントなくして、ターコイズ号をはじめとする2代目チンクエチェントがあのカタチ、あのレイアウトで誕生することはなかったかもしれないのだ。ジアコーサ技師が2代目チンクエチェントの父であるなら、セイチェントは2代目チンクエチェントの母のようなものだ。……そうなるとジアコーサ技師とセイチェントが夫婦関係にあるような感じになっちゃって何だかおかしなたとえな気もしないでもないけど、まぁそういうことだ。

で、まぁフィアットから何の説明もないから勝手に推測するしかないのだけど、映像の中の白いクルマは時を隔てたその後継という位置づけなのだと思う。車名の最後に「e」がついてるから、これはBEV、つまりフィアット500e同様バッテリーEVであることは明らかで、そういう意味では技術的な共通項はほとんどないだろうから、あくまでも精神的な意味合いにおける後継、という感じなのだろうけど。

現行フィアット500Xの後を継ぐモデルになる!?

そして、これまた推測と、さらにはヨーロッパの方で流れてるウワサをまぜこぜにして述べるなら、このクルマはラインナップとしては現行フィアット「500X」の後を継ぐモデル、もしくは500に対する「500e」のような存在としてデビューすることになるのだろう。

スタイリングデザイン、チラ見できるインテリアのシンプルさ、それに映像から推測できる車室内の広さや車体のサイズ感が、500Xにかなり近いように感じられるのだ。御存知500Xは、チンクエチェントの世界観を思い切り盛り込んだ陽気なコンパクトSUV。

デザインの面でもハンドリングのおもしろさでも現行のエンジン版チンクエチェントと似たところがかなりある。ターコイズ号に乗りはじめてフィアットと縁が深くなる以前から、個人的にはこのクラスでいちばん楽しいSUVだと感じていた。見た目から想像するよりぜんぜんスポーティだし、いうまでもなく実用的で、なかなかいいポジショニングにあるな、とも思ってる。

600eのスタイリングデザインについては写真と映像で眺めていただくのが一番いい(といっても写真は映像からのキャプチャーなんだけど)と思う。それじゃ肝心の中身はどうなのか。いや、これも推測するしかないのだけど、もし500Xくらいのサイズ感なのであれば、プラットフォームは同じステランティスの中のプジョー「e2008」や「DS3 Eテンス」などと同じ、e-CMP2をベースにしてるんじゃないか? ということが考えられる。そういえばジープ初のBEVであり、2022年のパリ・サロンでデビューも果たしてる「アベンジャー」も、e-CMP2プラットフォームをベースにしてるはず。

であるなら、600eはそのステランティス最新のジープ・アベンジャーに、中身はかなり近いんじゃないか? なんて考えたりするわけだ。ちなみにアベンジャーのBEVは、レネゲードよりも車体が若干小柄で、現時点で駆動はFWDのみ。54kWhのバッテリーを搭載し、モーターの最高出力は156ps、最大トルクは260Nm。航続距離はWLTPモードで最大400kmほどで、欧州では公共の急速充電システムを使えば3分で30kmを走行できる分を充電でき、残量20%から80%を24分で充電することが可能だといわれてる。

まぁそのあたりは実際にフィアット600eが正式デビューしてみないと何ともいえないところではあるのだけど、カソリックの国の人々にとって重要なヴァチカンに関連する動画でおそろしく控えめながらもこうしたティーザーを行うあたり、「じつは冗談でした」なんてことにはならないリアリティがあるように感じられる。

その発表がいつになるのかまったくわからないのだけど、アイコニックな2代目チンクエチェントと現行チンクエチェントの誕生日なんて、それにふさわしいよな、なんて思えたりもするのだ。そしてその日は7月4日。もうすぐだ。

とりあえず動いてるフィアット600eを見ることができるフィアット公式YouTubeの動画をお知らせしておくので、それを見ながら楽しみに待つことにしましょ!

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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