車中泊からトランスポーターまで「使える」クルマだった
もちろん最大の売りだった7人乗りが可能という点と、そのことによる実用性の高さをフルに生かした使い勝手のよさは魅力だった。カタログにも「ウルトラバリエーションシート」とのうたい写真で紹介しているが、当時、ひとクラス上のワンボックスワゴンにもヒケを取らない展開だ。
なかでも「フロント回転対座シート」はセカンドシートの背もたれを前倒しにしてテーブルとして使うパターン。さらにフロントシートを対座にしたままセカンドシート〜サードシートまでを寝かせたフルフラット状態、またはサードシートを前方にチップアップさせて4名+ラゲッジスペースとした状態など。
ドミンゴの場合はボディはハイルーフが標準だったため、頭上空間にはゆとりがあった。そのうえで多彩なシートアレンジを活用すれば、今でいう車中泊も何なくこなせ、トランスポーターとしてなら7人が乗れるわけだから、じつに「使える」クルマだったのである。
なおこのドミンゴが登場したのは筆者がまだ駆け出しの編集者だった頃。とあるRV誌の取材で富士山麓あたりにロケに出かけた記憶があるが、そのときにかなりのダート路で実際の「走り」の撮影をしたのだった。もちろん参加スタッフで7名フル乗車状態を再現しての走りの撮影で、駆け出しの筆者はたしか自ら進んでサードシート(それも3人がけの中央)に乗り込んだ。
ドライバーはその記事のレポーター氏で、運転にはまったく心配は要らなかったが、ダート路を走るドミンゴのサードシートで、頭と身体を前後左右上下にたいそう揺さぶられながら「まあ7人が乗れるクルマではあるけど……」と複雑な思いで撮影が早く終わるのを祈った経験がある。
カメラマンからの要請でみんな楽しそうな表情をするように……とのことになり、記憶が正しければ当時のTVCMの演出を真似て「ドミンゴ、ドミンゴ!」と掛け声を上げ、そのちょっと引きつった顔が当時の某RV誌の誌面に載ったような気がする。